一言進言

運転手はもういらない

~IT、AIに席巻される世の中に~

以前、周南市が電子決済を進めると言うので猛反対したことがあった。役所は印鑑社会だ。1枚の書類に、係長、課長、次長、部長と印鑑を集めるのが職員の仕事だった。それをパソコンの画面上ですべてすまそうと言う。実に効率的で、合理的な方法だと言われた。確かにそうだ。早いし、無駄がなくなる。だが、私は猛反対した。
今、周南市は千数百人の大所帯。異動も頻繁にされ、部下と上司、同僚などとの関係が希薄になった。確かに印鑑書類は非合理的だが、そうでもしないと、部下の顔色を見て健康状態や、精神状態を察することもできない。書類以上のことが聞けない。パソコンの画面上のやり取りだけでことを進める怖さは、想像するに、人間性を捨てるようなものだ。
先輩経営者が最近、AI(人工知能)に関する本を十数冊読んだと話していた。これからの世の中がどう変化するのか、今までの常識を覆すような時代の到来も意外に近いかもしれないと予測する。AIでの自動運転の車が初めて人間を死亡させたと聞いた。公道での実験でだ。ある会社は、面接でAIを使っているらしい。採用かどうかの判断を人工知能にまかせるそうだ。チェスも人工知能が世界一だ。
ITで世界が急速に変わった。アメリカの大統領選挙は膨大な個人情報が勝負を左右するようになった。一体この先、どんな世界になるのか。手塚治虫が描いた未来は、はや現実になった。ホテルの受付もロボットがやる時代、どこまで人間は疎外されていくのか。自動運転の車が一般的になるのも数年後かも知れない。
科学の進化は人々を幸せにするためと信じていたら、一部企業の金もうけのためだったと気づいたのは学生時代だった。学生運動の原点はそこだった。金持ちは昔ながらの材料で食事し、貧乏人は添加物だらけの廉価な食料しか食べられなかった。これからの時代はそれがもっと激しくなりそうだ。あらゆる分野で人工知能が使われるだろう。自動運転が最たるものだ。世界中から運転手と言う職業が奪われる。対面式の販売から、ネット販売に移行したのも、わずか数年だ。10年そこそこで多くの公衆電話が消滅した。
時代の流れと言ってしまえばそれまでだが、これからの若者たちが心配だ。IT、AIがらみの一部企業が世界を席巻、ほとんどの凡人は右往左往するような世界にならねばいい。今の若者たちはネット社会に翻弄され、化け物のようなものに支配されつつある。
規制せよとの声も出始めたが、金もうけの渦の中では勝てはしまい。新聞など読まなくても生活はできる。ネットで調べればすむと思っている。情報の正しさが問題でなくなった。せめてネット上でちゃんとした新聞を、本を、読んでほしいものだ。感性を磨いてほしいものだ。
面接官の感性すら信用しない時代だが、人間の見る目や、聞く耳を大切にしてほしいものだ。新聞を発行し続けることも難しい時代だが、こういう時代だからこそ、新聞は必要になる。(中島 進)