一言進言

翔北中学校の怪

~何千万円もかけて定住者獲得~

中山間地域に若者を定住させるのに、国も県も市も必死だ。先日は、若者2人の就農に2千万円ものイチゴハウスをプレゼントした。周南市長穂地区では、廃校になった翔北中の校舎の有効利用へと、周南クリエイティブセンターなる会社に年間1千万円を3年間出して誘致した。場所が中山間地域という理由だけだ。将来の雇用増が条件だそうだ。一方、地域の人は、草刈りを手伝ってくれるわけでもないし、地域の何の役にもたたない、と疑問を抱く人もいる。街なかのクリエーターたちは、事務所を山に持っていっただけで、何千万円ももらえるなんて、と大いに怒っている。
先日、翔北中に出向いた。車が1台あったので、入り口を探したら、営業担当の社員が1人いた。制作している人影は皆無だ。「働いている人は」「みんなノートパソコン持ってるし、営業に出かけている」。現在6人の従業員を、来年春までに10人に増やすのが条件だそうだ。それも週20時間以上働いたらいいのだ。在宅勤務でもなんでもオーケーだ。なんと緩い条件だ。それで年間1千万円もらえるなら手を挙げる会社はごまんとあるだろう。
問題は、こんな中山間地域の活性化案が、議会をすんなり通ることにある。クリエイティブセンターはもともと防府にある会社が作った。母体は防府だ。中山間地域にどんな効果をもたらすのか、吟味して決めたのか。起業したい若者は多いが、今の施策ではほとんど有効な手助けはない。銀行からの借り入れが少し楽になるだけだ。
一方で、周南市では年間千人以上の人口減少が続いている。若者の流出が止まらない。何千万円もかけて、大道理に若者が数人住んだと喜ぶことか。大きな視点で、将来の市を見ないと、子どもだましのような施策では、お金がどんどん使われる。
周南市は広報紙の制作をクリエイティブセンターに委託した。値段が若干安かったそうだ。1千万円の補助金を出している会社と、苦しいながら長年税金を納めている会社と競わせて、安い高いで広報を委託するのは、既存の会社にはやりきれなさが残る。これこそ、制作力で競わせる案件だろう。数人の若者を田舎に住まわせるのに何千万円もかけている。何千万円もかけて、若者流出を防ぐか、さてどちらが良いか。市職員、議会の対応次第だ。(中島 進)