一言進言

出生率最高の町に学べ

~若者定住に全力を~

岡山県の津山市の隣にある奈義町は出生率日本一になったことで有名だ。今も高い出生率を誇っている。人口6,000人の町だが、これ以上人口を減らさないと町長は公約する。以前にも紹介したが、再度紹介する。
時期は未定だが、徳山高鹿野分校と徳山北分校が生徒の募集を停止する。光丘高と光高は統合が決まっている。人口減少が原因だ。周南地区で唯一、下松市だけが微増だが人口を増やしている。県に高校の統廃合を止めさせるには、将来、子どもが増えることを見せつけることだ。
奈義町は目標がはっきりしている。人口を減らさないことが最重要課題と公言している。そのための施策が最優先だ。まずは若者用定住住宅を建てた。車が2台置けて、3LDKで子育てが可能なものだ。家賃も3万円台と格安だ。これに若者が飛びついた。格安な団地造成にも力を入れた。1区画400万円台の団地を売り出し、人気を集めた。これなら光市でも周南市もできる。通勤20分圏内、須々万地区などで可能だ。
従来の市営住宅は国の規定で作られている。駐車場はどんなに広大な場所でも1台。同町は雇用促進住宅として建設し、広さや駐車場を確保した。零細企業、小企業で働く若者は共働きだ。そうでなくても田舎では1人1台の時代だ。1家に1台の市営住宅には住めない。共働きも、子育ても可能な住宅を提供することは、基本中の基本だ。行政が本気になればできる。
子育て支援も徹底している。高校生まで医療費は無料だ。出産への援助も手厚い。子どもを増やすためなら、できることは何でもする。若者が増えれば、店も増える。確実に子どもが増えるとなれば、高校の統廃合も考え直すかもしれない。高校がないところで子育ては考えられない。行政が、少子化は仕方ないとあきらめたら、その地域はおしまいだ。
20~30年もすれば団塊の世代がほとんどいなくなる。高齢化率も大きく減少するだろうが、人口も激減する。今、行政が最も力を入れるべきは、若者定住だ。中山間地域に若者を増やすために多額なお金を費やすが、街中で働く若者を増やすことを真剣に考える時だ。周南3市で共同プロジェクトチームぐらい作ってはどうか。行政の柱をどう立てるか、各市長にかかっている。(中島 進)

翔北中学校の怪

~何千万円もかけて定住者獲得~

中山間地域に若者を定住させるのに、国も県も市も必死だ。先日は、若者2人の就農に2千万円ものイチゴハウスをプレゼントした。周南市長穂地区では、廃校になった翔北中の校舎の有効利用へと、周南クリエイティブセンターなる会社に年間1千万円を3年間出して誘致した。場所が中山間地域という理由だけだ。将来の雇用増が条件だそうだ。一方、地域の人は、草刈りを手伝ってくれるわけでもないし、地域の何の役にもたたない、と疑問を抱く人もいる。街なかのクリエーターたちは、事務所を山に持っていっただけで、何千万円ももらえるなんて、と大いに怒っている。
先日、翔北中に出向いた。車が1台あったので、入り口を探したら、営業担当の社員が1人いた。制作している人影は皆無だ。「働いている人は」「みんなノートパソコン持ってるし、営業に出かけている」。現在6人の従業員を、来年春までに10人に増やすのが条件だそうだ。それも週20時間以上働いたらいいのだ。在宅勤務でもなんでもオーケーだ。なんと緩い条件だ。それで年間1千万円もらえるなら手を挙げる会社はごまんとあるだろう。
問題は、こんな中山間地域の活性化案が、議会をすんなり通ることにある。クリエイティブセンターはもともと防府にある会社が作った。母体は防府だ。中山間地域にどんな効果をもたらすのか、吟味して決めたのか。起業したい若者は多いが、今の施策ではほとんど有効な手助けはない。銀行からの借り入れが少し楽になるだけだ。
一方で、周南市では年間千人以上の人口減少が続いている。若者の流出が止まらない。何千万円もかけて、大道理に若者が数人住んだと喜ぶことか。大きな視点で、将来の市を見ないと、子どもだましのような施策では、お金がどんどん使われる。
周南市は広報紙の制作をクリエイティブセンターに委託した。値段が若干安かったそうだ。1千万円の補助金を出している会社と、苦しいながら長年税金を納めている会社と競わせて、安い高いで広報を委託するのは、既存の会社にはやりきれなさが残る。これこそ、制作力で競わせる案件だろう。数人の若者を田舎に住まわせるのに何千万円もかけている。何千万円もかけて、若者流出を防ぐか、さてどちらが良いか。市職員、議会の対応次第だ。(中島 進)

つながりが切れる家族葬

~世代間の分断は解消できるか~

長生きすることは、別れの数が増えることだ。年齢を重ねるたびに、葬式に出る回数が増えてくる。多くの同級生も失った。若いころ一緒に遊んだ友の訃報は何とも言い難い。自分より年下の人の不幸は耐えられない。葬式に出るのがつらい、と電話があった。その心情が痛いほどわかる歳になった。
最近は家族葬が増えて、知らないままで送ることもままある。新聞に掲載することを嫌がる人も多くなった。親しかった人の葬儀を後から聞くのは、いかにも残念だ。なぜこんな風潮になったのだろうか。
さまざまな事情もあるのだろうが、遺族が、その後のつながりを拒否している。つながりたくないのだ。かくして人間関係は希薄になるばかりだ。昔から冠婚葬祭は、周囲とのつながりを保つ儀式でもあった。結婚も家族だけ、葬式も家族だけ。親がどんな人たちと親しかったか知る由もない。
唐津市のケーブルテレビは、市内のお悔やみ情報を毎日放映し、市民から喜ばれていると聞いた。シティーケーブル周南のメンバーと唐津市に、その実情を調べに行ったことがある。たまには放映拒否もあるが、大半は放映に好意的だという。同市も核家族化が進み、多くの若者が都会に出ているのは一緒だ。なぜここ、周南地区は身内がなくなったことを知られるのが嫌なのか。
以前、ある葬祭場に訃報の情報の相談に行ったことがあったが、警察からお悔やみ情報を出さないでくれと依頼されたそうだ。最近は葬祭場で見送るので、家が空き家状態になって、空き巣に狙われやすいから、が理由だった。隣近所との付き合いが希薄になった証拠だ。北海道新聞は道内のお悔やみ情報を何ページにもわたって伝えている。
故人のさまざまな人間関係を、遺族は知る由もない。家族葬が盛んな今日、考えさせられるテーマだ。人と人とのつながりを大切にする社会はどうしたら構築できるか。
徳山に帰った時、実に多くの先輩諸氏に助けられた。確かに多くの苦言も聞いてきたが、それが糧になり、今日まで日刊新周南が継続できた。最近、苦言を言う年寄りは徹底的に避けられ、地域の中でも阻害されているのではないか。世代間の分断の一つが家族葬に表れていると思えてならない。(中島 進)