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[16年目の視座~周南市の課題]

【官製談合事件】実態解明なく幕引きへ

見栄切った後に強制捜査

 「公平、公正、透明性を高めて厳格に執行した結果と認識する」
 昨年2月27日。周南市議会定例会。
 市発注工事の入札で落札業者の偏りを指摘する会派質問を受けた木村健一郎市長は答弁で見栄を切った。
 その9カ月後、市都市整備部次長(60)が官製談合防止法違反の疑いで県警に逮捕された。財政部技監兼検査監だった2017年12月6日に入札のあった市発注の徳山動物園北園広場工事の入札で、市内の福谷産業社長(66)に事前に設計金額(予定価格)を漏らした容疑だった。
 市役所に家宅捜索が入り、建て替えで真新しくなった新庁舎に早々と傷が付いた。
 社長は教わった金額を生かして判断基準額を割り出し、基準額を980円上回る価格で落札した。
 入札は落札額の上限に当たる予定価格を超えるか、下限の判断基準額を下回ると失格になり、入札参加業者は両者の間で積算競争にしのぎを削る。その間で最も入札額の低い業者が落札する仕組みで、基準額により近い価格で札を入れられるかどうかで腕が問われる。
 設計金額を知れば特定の算式で判断基準額を突き止められ、福谷産業は他社を出し抜いて8千万円の工事を手に入れた。
 不正が明るみに出たのは単純な理由からだ。発注者の市が大本の積算を誤り、価格が正確な額より低めに出ていたのだ。各社は市のミスに気づいていないため本来の額を目指して見積もり、結果として入札額も全体的に高めに張り付いた。
 そうした中、福谷産業1社だけが判断基準額に近い低価格で入札した。同社も積算ミスを知らず、他社同様に高い金額で札を入れるはずなのにと疑いの目が向けられた。

徳山動物園ペンギンエリア。事件の舞台となった北園広場工事と同様に疑惑が浮上している

徳山動物園ペンギンエリア。事件の舞台となった北園広場工事と同様に疑惑が浮上している

 北園工事の入札日、動物園関連でもう1つ入札があった。ペンギンエリア工事。市内の共同産業が判断基準額を「ドンピシャ」で当て落札している。この工事も市の積算ミスがあり、北園工事と同じように不自然さが際立っている。
 県警はペンギンエリア工事についても事態を把握しているが、強制捜査の動きは今のところ見せていない。立件するかどうかは証拠次第でペンギンエリア工事も事件化するとは一概には言えないが、同種事案で一方が立件され、もう一方が不問に付されたら不公平感は否めない。

190327h

監視委は実態解明せず

 「再発防止に真摯に取り組み、公正で公平な入札契約を図り、市民の信頼回復に寄与することを希望する」
 今月6日、市入札監視委員会が再発防止策を報告書にまとめ、木村市長に答申した。
 答申は(1)職員コンプライアンスの徹底(2)技監権限の分散と相互監視態勢の構築(3)設計価格の適正管理(4)入札制度の多様化(5)事後チェックの強化―の5項目を提言している。
 「落第点」「入札実務を知らない人が考えそうな結論だ」
 答申に対する地元建設業界の評価は厳しい。
 理由は1つ。事件の実態解明が手つかずのまま結論を出しているためだ。
 委員会は事件が公判中で市次長が否認していることと捜査権を持たないことを理由に「事実関係を究明するのは難しい」と実態解明を諦めている。
 再発防止策は実態解明があって初めて成立する。徹底的に解明し、問題点を浮かび上がらせ、それに応じて対策を打つ。家造りで基礎ができていないのに上物を建てても倒れるように、実態解明抜きの再発防止策は説得力を持たない。
 市の建築、土木工事の入札結果に一通り目を通すと、各社の入札額は判断基準額寄りに張り付き、基本的に競争原理が働いている。各社とも新鋭の積算システムを取り入れ、入札額を探る企業努力をしていると見ていい。今回の事件は積算争いについていけない業者が発注元の市職員を頼ったと考えられる。
 市は実態解明が不十分なまま答申を受け入れた。業界では「4月の市長選の前に木村市長が浄化姿勢をアピールしたかったのではないか」とささやかれている。
 市が事件の進展に応じて実態解明を進める動きは見られない。答申に基づいて対策を講じ、それでおしまいにするのだろう。実態解明が生煮えのまま幕引きになる公算が大きい。(井藤進吾)

【きょうの紙面】
(2)県議選出馬予定者アンケート(下松・光市区)
(3)光市異動は中規模119人
(4)地域づくりへ、共創プロジェクト発表会
(5)光市大和コミュンティセンターが完工式

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