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[16年目の視座~周南市の課題~]

防災「自分の身は自分で守る」を基本に

琵琶湖3杯の雨量

 琵琶湖3杯分。
 昨年の西日本豪雨(6月28日~7月8日)の総雨量だ。高知県馬路村で1,852ミリを記録した。成人男性の平均身長を超す。周南市では最大490ミリを勝間で観測している。
 全体の死者・行方不明者は245人。鹿児島県から岐阜県までの14府県に及ぶ。これほど広範囲に犠牲者の出た水害は例がない。周南市でも熊毛地区を中心に被害を受け、土砂崩れで樋口の60代女性が命を落とした。

西日本豪雨で被害に遭った熊毛地区の河川。入札不調で復旧工事が遅れている

西日本豪雨で被害に遭った熊毛地区の河川。入札不調で復旧工事が遅れている

 9月には台風21号が近畿地方に上陸し、13人の死者を生んだ。中心気圧は915hPa。過去最大だった1934年の室戸台風(911hPa)に匹敵する。
 記録的な水害が毎年のように起きる。地球温暖化が主因だ。海水温が上がって大量の水蒸気が発生し、巨大台風と多量の雨をもたらす。
 台風の発生緯度も高くなっている。51年からの65年間の平均で北緯16.0度だったが、近年は北緯20度台が珍しくなく、日本近海に迫っている。進路も迷走し、読みにくくなった。
 地象災害も阪神大震災(95年)、東日本大震災(2011年)、熊本地震(16年)と巨大地震が相次ぐ。
 周南市も活断層の岩国断層帯が走る。全長44キロで新南陽から須々万、中須地区を通る。北部には佐波川断層(全長40キロ)が鹿野を横切る。海でも大津島沖を起点とする周防灘断層群(44キロ)が横たわる。市は全体として最大震度6強の地震が起こり得ると想定している。
 市は今後30年間に70~80%の確率で発生すると言われる南海トラフ地震の津波浸水域にも入り、最大3.5メートルの津波が押し寄せると予想される。
 自然は荒ぶっている。昭和年代を「戦争の時代」と呼ぶなら平成年代は「災害の時代」と言える。大規模天災がいつどこで起きてもおかしくない。

公助から自助へ

 〈行政が防災対策を強化する方向性を根本的に見直し、住民が「自らの命は自らが守る」意識を持ち、自らの判断で避難行動を取り、行政はそれを支援する社会を目指すべきだ〉
 内閣府の中央防災会議は昨年12月、西日本豪雨を受け、避難対策の報告書をまとめた。
 防災の主体を180度転換する画期的な提言だ。
 日本の防災はこれまで行政が主体で住民は守られる客体だった。それを住民主体に切り替え、行政をサポートする役目にとどめた。
 行政主導の防災は1961年に施行された災害対策基本法で明確化された。
 法は国の責任について第3条で「国民の生命、身体及び財産を災害から保護する使命を有し、防災に関し万全の措置を取る責務を有する」と明記している。4条で都道府県、5条で市町村の役割にも触れているが、文言を「国民」を「住民」に置き換えたらほぼ同じ文面と言っていい。
 法施行で災害犠牲者は劇的に減った。45年の三河地震(死者2,306人)、59年の伊勢湾台風(5,098人)などそれまで年間1,000人単位で死者が生まれていたのが、施行後は阪神大震災と東日本大震災の年を除き、100人単位に減少している。
 行政が法を受けて列島中で防災インフラ整備に取り組み、その成果が表れた。
 だが、行政主導の防災は住民に依存体質を生む副作用をもたらした。
 東北の三陸沿岸には高さ10メートル級の防潮堤が林立している。行政が巨費を投じて打ち立てた。それがいつしか住民に「これだけ大きな防潮堤があるのだから津波が来ても逃げなくて大丈夫」という安心感を芽生えさせた。
 その油断を見透かすかのように東日本大震災の巨大津波が襲来する。高さ30メートル。防潮堤をやすやすと越え、住民をのみ込んだ。
 法は行政に的確な避難情報の発令を義務付けるが、その裏返しとして住民に「避難情報が出ない限りは逃げなくていい」という甘えを植え付ける。
 行政の作るハザードマップは住民の住まいが危険区域に入っているかどうかを知らせて警戒を呼び掛けるが、区域外の住民に「わが家は入っていないから安心」という高くくりを生じさせる。東日本大震災で岩手県釜石市鵜住居(うのすまい)地区の犠牲者がマップの危険区域外の住民に集中していたことを忘れてはならない。
 防災の基本姿勢として「自助」「共助」「公助」のフレーズが使われる。公助一辺倒だった防災は自助に重きを置く転換期に入った。
 〈平成30年7月豪雨災害について〉
 手元に周南市の行政報告資料がある。豪雨災害を受けて防災対策を見直した。「災害対策本部体制を確立する」「災害情報を迅速に把握し、共有する」「避難情報は空振りを恐れずに発令する」と反省の弁と改善策が列記されている。
 市も市民向けの防災ガイドブックで「自分の生命は自分で守る」と自助の重要性を強調し、「行政ができることには限界がある」と公助の不完全性を正直に告白している。
 だが、行政報告資料を読む限り、行政主体の旧来の防災思想から抜け出せていない。死者が出ても対策本部を立ち上げなかったとか、土砂災害警戒情報が発令されても木村市長がコンサート鑑賞に興じていたとかと批判を浴び、出直しをアピールしたい側面もあったのだろう。
 中央防災会議の提言は行政に「サボっていい」と言っているのではない。防災の主体を行政から住民に変える根本的な改革をしないと、新たな災害が起きたらまた同じ惨劇を繰り返すと警告している。(井藤進吾)

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