ヘッドラインニュース

[Business Eye]

最大の観光客は「出張者」

周南市中心市街地活性化協議会
タウンマネージャー 平 義彦さん(50)

《profile》たいら・よしひこ
1969年長崎市生まれ。駒沢大中退。
新聞記者、ムラおこし雑誌編集、食品会社広報、事業者支援の仕事を経て長崎・五島列島で地域おこしに取り組む。

190530

―周南市はお土産がないと言われます。「出張先に持っていく物がない」と。
 周南市に赴任し、JR徳山駅のお土産屋さんをのぞいてお菓子の箱の裏を見たら下松市、防府市の製菓会社が目立っていました。中には熊本のメーカーも。「ご当地名物を作らなければ」と手始めにお土産開発の検討を始めました。
 商品開発のキモはターゲットを明確にすることです。6次化産業の流れもあって全国でご当地名物が開発されていますが、「誰に売るのか」があいまいでヒットにつながりません。

―ターゲットは女性ですか? それともお年寄り?
 ズバリ「出張客」です。周南市は工業都市で最大の観光客は実は「出張者」です。出張者はお土産を家庭用と職場用に2個買いますから客単価が高い。
 須金フルーツランドの生産者にナシを使った食品を提案しました。職場で配るから個包装にすべきでしょう。箱もキャリーケースに入るよう小さめにしたい。
 お土産はビジネスホテルのフロントで売ります。出張者は時間がありません。夜の新幹線に飛び乗るようにして帰って行きます。街なかのお土産屋さんに寄る時間がないのです。

―出張者を観光客と見る発想は目からウロコが落ちました。
 社員旅行の誘致も考えています。社員旅行は見直され、復活の動きがあります。広島や福岡など有名な観光地は誰しも既にプライベートで行っています。周南市は知られていないからそこを逆手に取るのです。社員旅行は個人では行かない所の方がかえっていい。
 周南市は山と海がコンパクトにまとまり、ここだけで完結できます。手ぶらで果物狩りができ、釣りができます。社員旅行の参加者は大掛かりな移動を面倒がります。新幹線に乗ったらすぐにビールを飲みたいのです。
 地方の大都市と同じ土俵で戦う必要はありません。一般的な観光戦略にとらわれず、独自の道を歩む方がいいでしょう。その際の起点は徳山駅にすべきです。新幹線のぞみの停車する利点を再評価し、フル活用しましょう。

―タレントの出川哲朗さんがバイクで全国を旅する番組で先日、徳山を訪れました。ランチで名物のフグが食べたいと店を探したのですが、昼に出す店がなく、出川さんは残念そうに次の目的地に行ってしまいました。
 港町の飲食店ですら旬の魚料理をお昼に食べられないことはよくあります。これまでの習慣やお客さんのニーズ、採算の問題からです。事前予約制でいいから情報発信してお客さんを受け入れたい。重要なのは本物のおいしさを言葉で伝えることです。

「楽しい、おいしい、美しい」

―JR徳山駅前の商店街はシャッター通りになりました。かつてのにぎわいを知る者にとって現状は寂しい限りです。
 高齢で跡取りのいない商店主に「一緒に頑張りましょう」と呼び掛けてもなかなか難しいとは思いますが、まずは話を聞いて再生の道を探り、その一方で若い起業家を呼び込みたいと思います。

―空き店舗に起業家を招く試みこれまでも取り組んできましたが、成果を上げられませんでした。
 フォローが足りなかったのだろうと思います。来る時だけ拍手で迎えて「あとは1人で頑張れ」では定住しません。「商売は順調ですか」「困ったことはありませんか」と耳を傾け、課題があれば解決に向けてすぐに動くことです。地域おこしに携わった経験から得た教訓は「やってみなければ分からない」「やるなら今」です。

―商店街の再生がタウンマネージャーの最大の仕事です。
 中心市街地活性化と言うと話が大きくなってどこから手を付けていいか分からなくなります。面で考えず、この店をこう盛り上げようとかこの通りでこう仕掛けようとか点や線で考えて実行に移し、それを積み上げていくべきです。
 中心市街地と言うと「シャッター街」とか「ゴーストタウン」とかマイナスイメージで語られますが、そんな中にあって営業を続けている店はあるわけです。その店の頑張りを伝え、プラスイメージを発信すべきです。
 「朝、店の前を掃除するおばちゃん」「通勤、通学者を改札から送り出す駅員さん」など日常の街の光景を写真や動画で切り取り、SNSで発信しましょう。
 古い商店街にも人、物、歴史の魅力があります。その魅力を磨き上げ、的確に情報発信することが大切です。口コミが一番頼りになり、そのお手伝いをしたいと思います。

―徳山駅前はホテルやマンションを核施設とする再開発が本格化します。
 現時点では「建物」が建つというだけでそれが再生の原動力になるかどうかは今後の具体的施策次第でしょう。巨大な箱モノを造って十分に使い切れない事例は日本中どこにでもあります。
 地域おこしのキーワードは「楽しい、おいしい、美しい」です。福岡の人里離れた山の中に人気のレストランがあります。料金も1人2万円と高いのですが、予約が何カ月先まで埋まっています。「おいしい」は人を呼ぶのです。中でも「新鮮な魚と野菜」は集客力があります。生産者直売所のアンテナショップを商店街に出し、山と街をつなぐ交流施設を設ける提案をしたいと思っています。

▼紙面の購読:試読の方はこちら
http://www.shinshunan.co.jp/contact.html
▼電子版購読はこちら
http://www.shimbun-online.com/latest/shunan.html