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水素先進都市へ積極展開【金曜記者レポ】

周南市 生かせるか“産地”の強み 事業の大半は補助金利用
 山口県は新しいエネルギーとして注目される水素を全国で1割生産していることから、水素の利活用に力を入れる「水素先進県」。中でも周南市は水素先進都市を目指し、昨年10月からは水素で動く自動車を市民に貸し出すなどの事業を展開して注目され、全国からの視察は2015年度は68団体の98人、16年度は62団体の1,200人にのぼっているが、その事業内容を見てみた。(延安弘行)

クラリティと水素ステーションのスタッフら

クラリティと水素ステーションのスタッフら

 水素は、周南市では㈱トクヤマ徳山製造所、東ソー南陽事業所で塩水を分解してカ性ソーダとともに大量に作られ、工場内で利用するほか、㈱トクヤマは岩谷産業との合弁で山口リキッドハイドロジェンを設立し、13年に液化水素製造工場を完成させた。東ソー南陽事業所にも圧縮水素製造工場があり、岩谷産業を通じて販売している。
 市は13年8月、関係する企業や商工関係団体、行政機関で市水素利活用協議会を設立。14年4月に市水素利活用構想、15年4月に「水素エネルギーで未来を拓く~水素先進都市『周南』」を基本理念とする市水素利活用計画を策定した。
 これに合わせて15年3月に徳山動物園、鼓海の地方卸売市場で水素を燃料として供給、酸素との化学反応で発電する純水素型燃料電池の実証試験をスタート。環境省委託事業の地域連携・低炭素水素技術実証事業の環境省委託事業に採択されて8月には鼓海に中四国初の水素ステーションとなるイワタニ水素ステーション山口周南がオープンし、燃料電池の設置などの事業を加速させてきた。
 この年、地方卸売市場内で燃料電池フォークリフトの実証実験を開始し、燃料電池自動車の購入に県と市から50万円ずつ、計100万円を補助する燃料電池自動車普及促進補助金制度も始め、同市場内に水素学習室も設置した。
 16年度も10月から燃料電池ゴミ収集車の実証事業、燃料電池自動車を市民に貸し出すカーシェアリングもスタート、3月から道の駅「ソレーネ周南」でも純水素型燃料電池実証事業が始まった。
 動物園の燃料電池の発電量は家庭と同じ0.7キロワット、ソレーネ周南は3.5キロワットで、燃料の水素はボンベで供給できるが、市場には今年3月までに100キロワットの燃料電池を設置するため水素ステーションから水素を直接供給するためのパイプラインも敷設する。
 周南市の水素関係事業費は14~16年度の3年間で2億2,362万4,000円にのぼるが、このうち市の一般財源は2,959万9,000円で全体の13%。市の負担分は普及、啓発や燃料電池自動車導入促進事業として15、16年度で計8台分の400万円など。燃料電池やパイプライン設置の地域連携・低炭素水素技術実証事業は1億8,654万2,000円の全額が環境省の補助となっている。
 16年度から中堅、中小企業の水素関連産業創出を推進する水素イノベーション創出事業も始めたが、事業費は292万7,000円で半額は内閣府の地方創生交付金。
 10月からのカーシェアリング事業はホンダの燃料電池自動車クラリティを使い、リース料、保険料、1キロ1,100円の燃料の水素の代金を合わせて3月までに286万3,000円かかるが、これも国からの補助という。
 燃料電池自動車は水素と酸素の化学反応で発生する電気でモーターを回して走るが、市民に貸し出し中のクラリティは燃料電池などをボンネット内に収納、広々とした室内で乗り心地も良好。水素は5キロまで充てんでき、750キロまでの走行が可能という。
 しかし、鼓海のイワタニ水素ステーションを利用している燃料電池自動車は山口、広島県を合わせて約20台、1日当たりの来所は1件ていどにとどまっている。
 水素利活用計画では15年度から17年度までの3年間で市内の燃料電池自動車などが70台になるとしていたが、これは自動車メーカーの生産計画ができる以前の数字で、見直しは必至。国の助成頼みで続けられている水素関連事業。使用時に二酸化炭素を排出しない、貯蔵や運搬も可能など優れたエネルギー源である水素の産地というメリットを本当に生かせるとすればこれからだ。