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東洋鋼鈑 初の医療分野進出

山大などと遺伝子解析キット開発 抗がん剤副作用回避に効果
 下松市に生産・研究の拠点を置く東洋鋼鈑(隅田博彦社長)が山口大学(岡正朗学長)、臨床検査機器・試薬の研究販売の横浜市のエイアンドティー(三坂成隆社長)と共同開発したがんの個別化医療の実現に役立つ遺伝子解析キットが国の承認を得て国内での製造販売が可能になった。東洋鋼鈑にとって初の医療事業分野の進出で、今年中に販売される。

左から森賀常務、隅田社長、岡学長、吉村取締役、阿野部長

左から森賀常務、隅田社長、岡学長、吉村取締役、阿野部長

 東洋鋼鈑は飲料缶や液晶テレビ、タブレット端末、結束機などの素材を生産。今回の共同研究はその技術を発展させて非鉄、樹脂の精密加工の同社独自の素材・表面処理技術を活用し、医療分野への進出を目指したもの。
 2000年からDNAチップ研究を下松市の技術研究所でスタートさせ、05年から山大と共同研究を開始。(株)トクヤマが起源のエイアンドティーも09年から共同研究に加わり、14年に「ジーンシリコンDNAチップキットUGT1A1」の名称で厚労省に薬事申請。昨年12月に承認され、16日、山口市の山口大学吉田キャンパスで3者と県が記者会見を開いた。
開発された遺伝子解析キット

開発された遺伝子解析キット

 この解析キットは抗がん剤のイリノテカンの投与前に患者の副作用発現リスクを判定できるもの。遺伝子を解析したデータで薬剤を投与できることから、現在は25%の薬剤有効率が大幅に改善され、特定の遺伝子を持つ患者に副作用を避けた投薬ができる。
 複数の遺伝子型を同時に測定でき、精度も高く、少ない検体量で短時間の測定が可能になるのも特徴で、血液を乗せる検査用チップにDNAを高密度に固定するために東洋鋼鈑の表面処理のコーティング技術が生かされている。
 研究には医療関連や環境、エネルギー分野の研究や事業化を支援する県の“やまぐち産業戦略研究開発等補助金”を東洋鋼鈑が17年まで5年間で計5億円を受けた。今後は保険承認を経て今年中の販売開始を目指す。
 記者会見には隅田社長、森賀俊典取締役常務執行役員、岡学長、エイアンドティーの吉村佳典取締役、県商工労働部の阿野徹生部長が出席。
 隅田社長は「開発に20年かかった。山大とは今後も共同研究を続けてライフサイエンス事業を当社の主要な柱の1つに育てたい」と話し、キットは下松事業所で生産し、今後の事業拡大で数十人を新規雇用することを明らかにした。
 岡学長も「抗がん剤の副作用の有無を判定でき、患者が有効な薬剤を選択できるのが最大のメリットだ」と話していた。