ヘッドラインニュース

全国5番目の安さ

【金曜記者レポート】下松市の水道料金、恩恵大きい東洋鋼鈑の上水購入
 人口の減少が続く県内で唯一、増加している下松市。公共料金の中でも同市の水道料金は県内ではけた違いに安価で、全国813市区でも5番目という安さ。転入者は子育て世代が多いが、上水道料金の安さは家計にはうれしい。2027年まで現料金を維持する方針を示している同市の上水道料金の安さの根拠と今後の見通しを探った。(山上達也)

御屋敷山浄水場

御屋敷山浄水場


 同市の上水道は末武川などを水源に市内のほぼ全域に給水し、年間配水量は2016年度で1,455万3,250立方メートル。上水道料金は1立方メートル79.74円の給水単価が基本。平均家庭の1カ月の使用量(13ミリ口径で20トン)で比較すると周南市のほぼ半額、光市の約7割となる。
 これを維持できている要因は東洋鋼鈑下松事業所が上水を工業用に大量購入している▽浄水場が高所にあり、自然流下配水率が高い▽コストのかかる地下配水池の建設を見送ったことが挙げられる。
 中でも東洋鋼鈑による大量購入は大きいが、これは同社が製造する鋼板やハードディスクの洗浄には一般の工業用水ではなく、飲料水用に浄化した上水が最適なため。15年度の需要用途別の給水量では工業用が全体の53.8%の716万8,000立方メートルで、うち90.6%の649万2,000立方メートルを同社が購入している。
 周南市は約14万5,000人、下松市は約5万7,000人と人口は2.5倍の差があるが、販売水量はともに1,300万立方メートル台で、人口に対する販売水量が多いことがわかる。

浄水場の高所立地、地下配水池見送りも
 浄水場が高所にあることで配水にかかる動力が省力化されていることも大きい。周南市の大迫田、菊川浄水場や光市の林浄水場は一度、ポンプで高所にある配水池に送って配水しているが、1957年に完成した下松市の御屋敷山浄水場は標高43メートルの丘にあり、給水量の75%は自然流下で配水している。
 圧力ポンプの燃料代がかからず、市上下水道局の白木正博局長は「自然条件を巧みに生かした先人の知恵」と話す。
 地下配水池の建設が検討されたこともあったが、2000年に就任した井川成正前市長はコストが高過ぎると判断、建設にこだわる当時の水道局長を事実上、更迭してまでして建設を見送り、3年後に地下配水池に比べてコストが8分の1ですむテント式配水池2基を建設して需要を満たした。
 さらに浄水場業務や水道料金収納の民間委託も進めてコストダウンを図っている。

浄水場や老朽管の耐震改修が課題に
 こうした背景から市の上水道料金は現状を最低10年間は維持する見通しで、人口増加の追い風が続きそう。当面は老朽化した御屋敷山浄水場や老朽管の耐震改修が課題で、11年から27年までの水道事業基本計画に沿って進めている。
 昨年4月に県外から会社員の夫(37)と3人の子どもと美里町に転入した女性(34)は「水道メーターが故障しているのかと思ったほど安さにびっくりした。家計が助かる」と話す。
 周南市は合併後も旧市町単位で違った上水道料金を現在は統一。懸案の熊毛地域の上水道敷設も光市水道局から上水を購入して実現し、生活用水が井戸からくみ上げる簡易水道頼みだった住民を安心させている。
 光市も周南市熊毛地域への上水の送水で収入の安定を図る一方、工業用水確保のため島田川上流の中山川ダムの水利権を工業用水に転換し、周南市、下松市のコンビナート企業に送水する県事業の効果に期待している。
170616h