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増加傾向の救急業務

【金曜記者レポート】【周南】到着時間の遅れも
 119番通報で消防署から出動する救急車。その出動件数は周南、下松、光市の3市を合わせて年間約12,000件、1日30件以上にもなる。近年は高齢者が増えているのも影響してか、急病による出動は増加傾向にあり、最寄りの消防署の救急車が出動中の場合は別の消防署から出動したり、救急車以外の車でまず駆け付ける場合もある。一方で、救急車を呼ぶほどの緊急性がないのに安易に依頼するケースもあり、適切な運用が課題となっている。(延安弘行)

170915h

到着すれば「もう大丈夫」

 県消防防災年報によると、2015年の出動総数は67,292件。このうち急病が60%を占め、一般負傷が15%、病院から病院へ患者を運ぶ転院搬送も12%あり、交通事故が8%。このほか自損行為、労働災害、運動競技への出動などがある。
 周南地区の救急業務を担うのは周南市消防本部、下松市消防本部、光市と周南市熊毛地区、田布施町を管轄する光地区消防本部。ともに24時間体制で患者を搬送している。
 周南市消防本部の救急車は合計9台。中央署、周南団地の東署、新南陽地区の西署に2台ずつ、鹿野地区の北署、戸田の西部出張所、須々万の北部出張所に各1台を配置。2012年に6,000件を下回っていた出動件数は昨年1年間で6,353件と約400件増加した。
 患者の最寄りの消防署の救急車が出動している場合は別の署から回すが、平均到着時間は遅くなり、最近は7.1分。以前は6分台だったという。ただ、都市部などで全国的に問題になっているたらい回しにされて搬送先の病院が見つからないという事例はない。
 しかし現地に到着してみると、大けがと思って救急車を呼んだがそれほどではなかったり、気分が悪くなったが回復して「もう大丈夫です」と言われるケースもある。

待機する救急車=周南市中央消防署

待機する救急車=周南市中央消防署

救急車以外で出動も

 下松市消防本部も12年は2,214件だったが、16年は200件増えて2,443件になり、今年はさらに増える傾向にある。同市の救急車は3台だったが、近く4台目を配備する。3台の時は車検などで1台が使用できないと出動できるのは2台だけ。3件目の出動要請にはとりあえず別の車で出動して処置し、前の搬送を終えた救急車が駆けつけるのを待つ場合もあるという。
 職員は65人のうち消防署に40人を配置しているが、交替勤務のため当直は指令室の3人を合わせて13、4人。救急車は1台に3人が乗るため、3台が出動する場合は消防署の勤務者だけでは足らず、本部の職員が乗ることもある。
 そうして出動しても、同市でも「酒を飲んだので家族が車を運転できないので」「救急車だと早く診てくれるから」と緊急ではないのに救急車を呼ぶ人もいる。
 昨年3月には市庁舎隣から河内へ移転し、ヘリポートもある市消防本部が完成。ドクターヘリによる患者の移送もしやすくなった。ただし、市街地からは離れたため、市街地の患者への到着時間は遅くなったという。
 光地区消防本部でも管内の合計で12年に3,649件だった出動が16年は3,911件と増加傾向。同本部や下松市でも急病のほか転院搬送も増えている。
 救急車は光市の中央署に2台、田布施町の東署、熊毛地区の北署に1台ずつ。このほか車検などの時に使う予備の救急車が1台ある。東、北署の救急車が出動している時に管轄する地区で2件目の要請があった場合は中央署から出動するが、到着時間は遅くなる。
 同本部でも緊急性が低いのにすぐに救急車を利用する人が多く、入院が必要な重症の患者は搬送したうちの半数。すぐに帰れた人の中には救急でなくてもよかった人もいると見られる。

救急車の内部

救急車の内部

救える命が救えない!

 緊急時に救急車を呼ぶのか、その線引きは難しいが、現状は到着が遅れて救える命が救えない事態がいつ起こっても不思議ではない状態。しかし患者が増えたからといって高額な救急車も専門的な知識、技能が必要とされる人員もすぐには増やせない。
 全国消防協会が作っているポスターに書かれた「救急車はタクシーではありません」の言葉は切実。各本部ともホームページやポスターで適正利用を訴え、消防庁は病状の緊急度を素早く判定、救急車を呼ぶ目安にできるスマートフォン用のアプリ「Q助」を作って利用を呼び掛けている。
 全国では有料化を検討する声まで上がるのも無理からぬ現状もある。不適切な利用だけはしないでほしい。