ヘッドラインニュース

新規就農、生産拡大に期待

【金曜記者レポート】
【周南市】ワサビ超促成栽培で実証実験

 周南市はワサビの収穫を通常より早くする超促成栽培の実証実験に昨年度から産地の鹿野地区などで取り組んでいる。通常は約20カ月かかる種まきから収穫までの期間を耐雪型ハウスの使用などで約12カ月まで短縮させるもので、来年度にかけての実証で効率的な栽培方法を確立し、将来的にはトマトとの複合経営による新規就農者の増加につなげたい考え。現状や今後の展望を調べた。(安達亮介)

和食ブーム、本物志向で需要増
 ワサビは収穫まで時間がかかるため未収益期間が長く、自然災害や気象変動の影響も受けやすいことから生産が不安定だが、世界的な和食ブームや消費者の国産・本物志向の高まりから需要は急増している。
 実証実験は栽培期間を短縮、増産してこの需要に応え、新規参入を容易にすることなどが目的。同市のほか岩国、山口市、静岡県伊豆市、佐賀県佐賀市でも取り組んでいる。

標高480メートルの大潮のビニールハウス

標高480メートルの大潮のビニールハウス


新規就農者がワサビ栽培へ
 ワサビは冷涼な気候で、主に山間を流れる渓流の浅瀬に自生する。このため周南市では鹿野地区で栽培され、ワサビのしょう油漬けが特産品となっているが、鹿野わさび生産組合の生産者は2007年の20人から現在は12人にまで減っている。
 このため市は昨年度に創設した技術研修、農地確保、機械・施設整備、住居確保をまとめて支援する「新規就農者パッケージ支援制度」の利用者に栽培時期が重ならないワサビ、トマトの複合経営をしてもらう計画。来年度には2人が就農する予定だが、今後5年間で毎年5人の新規就農を目指している。

品種、定植時期の違いも調査
 ワサビは大きく分けて清流の浅瀬で栽培する沢ワサビと、畑ワサビの2つの栽培方法があり、鹿野では畑ワサビのうち林の中で育てる林間ワサビで育ててきた。
 市の実証実験で栽培するのは直接水を使わず畑で作る畑ワサビで、標高約1,000メートルの長野山のビニールハウスで水冷方式で苗を育て、中央に支柱がある耐雪型ハウスの畑に植えて保温しながら栽培することで早期の収穫を実現している。
 この技術は県農林総合技術センターに指導を受けており、チューブワサビの風味付けやワサビ漬けの原料などに使える葉と茎や、料亭での添え物などに使われる花も収穫する。事業費は昨年度が148万円、今年度が504万円。
 実証に使う畑は鹿野地区の大潮、渋川、鹿野上と須金地区の4カ所合わせて約600平方メートル。昨年は11月に植えて今年4、5月に葉と茎を収穫してJAに出荷した。
 今年は9月下旬と10月下旬に定植時期を分け、うねもビニールで覆うか木くずをまくかに分け、ワサビの品種も3種用意し、より超促成栽培に適した方法を調べる。

1人年間3トン出荷へ
 新規就農者パッケージ支援制度を受けた就農者は、計画では10アールの畑で年間3トンを出荷でき、これによる所得は110万円、トマト栽培と合わせ300万円を想定している。
 市農林課農政畜産担当の松田康仁さん(35)は「新規就農者が収入を得られるよう県農林事務所とも連携して研究を進め、市内のワサビ生産量の増加にもつなげたい」と話している。
 需要が拡大しながら栽培の難しさなどから生産者が減っていたワサビだが、新技術の導入や市の支援で生産増の道筋が見えてきた。出荷量が増えればワサビの加工品を開発して新たな需要を創造し、それによる産地活性化も期待できる。今後の推移を見守りたい。

《日刊新周南を読んでみたい!》
試読、購読希望の方はhttp://www.shinshunan.co.jp