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米国人が書いた「回天」

【周南(徳山)】回天顕彰会が出版 最初の撃沈艦の記録から
 周南市の回天顕彰会(原田茂会長)は米国人のマイケル・メアさんとジョイ・ウォルドロンさんが大戦末期の特攻兵器「回天」の日米の記録をまとめた「KAITEN」の日本語版を8日、出版した。邦題は「回天」。「秘密兵器人間魚雷『回天』とその『回天』が第二次世界大戦で撃沈した最初の米海軍艦艇」のサブタイトルをつけた。中学生にも読みやすいように配慮して翻訳しており、同会は幅広い人に読んでほしいと呼びかけている。

日本語版「回天」を持つ原田会長

日本語版「回天」を持つ原田会長

 11月8日は1944年に回天の最初の部隊、菊水隊が周南市大津島にあった訓練基地から戦場に向かって出撃した日。「KAITEN」は菊水隊の攻撃で11月20日に撃沈した油槽艦「ミシシネワ」の沈没前後が、回天の誕生や戦闘の経緯とともに描かれている。
 メアさんは実業家で歴史家。父、ジョン・メアさんは沈没当時の「ミシシネワ」の乗員で、ジョンさんは生き残った。亡くなる前に菊水隊の真実について出版してほしいとマイケルさんに言い残していたことからマイケルさんは1995年に調査を始め、日本の回天関係者や大津島の回天記念館の協力も得てまとめた。
 共著者のウォルドロンさんは共著に真珠湾攻撃を描いた「米艦『アリゾナ』」もある米国のジャーナリスト、編集者で、メアさんの調査に協力した。
 日本語版は昨年1月、メアさんから日本語版を出すために出版社を見つける手助けをしてほしいという手紙が原田会長のもとに届いたのがきっかけ。出版社を探したが、見つからず、回天顕彰会が自費出版することにした。
 翻訳は旧海軍の戦没者や海上自衛隊の殉職者の慰霊、顕彰などもしている公益財団法人水交会の会員が協力した。
 完成した日本語版はA5判378ページ。第1章は回天の開発者の1人、黒木博司大尉が書いた大型魚雷に隊員が乗り込んで敵艦に体当たりする攻撃方法の採用を求める血書の上申書を山本五十六連合艦隊司令長官が読む場面から始まる。
 一方、高速油槽艦として建造された「ミシシネワ」の就役は1944年5月。建造された経緯と完成から半年後、太平洋のウルシー環礁で回天によって沈没するまでが、日本側の動きと交互に登場する形で進行。
 「ミシシネワ」の乗員は278人。そのうち67人が沈没に伴って戦死したが、同艦の就役からの活動、艦内での勤務、生活の様子や乗員一人々々の経歴、沈没前後までの行動や考え、心境などが関係者への丹念なインタビューなどによって詳細に描かれている。
 菊水隊は3隻の潜水艦に4隻ずつの回天を搭載して出撃。そのうち1隻は米国の駆逐艦によって撃沈された。残る回天8隻のうち3隻は故障のため発進不能で潜水艦とともに帰り、ウルシーで戦死したのは5人だった。
 「ミシシネワ」に回天が命中してから沈没するまでの乗員の脱出、救助の様子はこの本のクライマックスだが、収容された遺体の中に見慣れない服装の日本人の遺体があり、回天の開発者の1人で、この作戦に搭乗員として参加していた仁科関雄中尉と思われることも記している。
 巻末には「ミシシネワ」やその乗員、黒煙をあげながら沈没する様子の写真と回天記念館の協力で仁科中尉ら回天の搭乗員や回天の写真も掲載している。
 原田会長は12日に回天記念館前庭で開かれた回天烈士・回天搭載戦没潜水艦乗員の追悼式の式辞でこの本の出版を報告し「今回の日米共同作業による出版で、相互がわだかまりを解き、平和に向かって前進するきっかけにするとともに平和の文化発信の一助にしたい」と出版の意義を述べた。
 税込み2,700円。問い合わせは周南市みなみ銀座の周南観光コンベンション協会(0834-33-8424)へ。