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ものづくりの現場

【下松】日立笠戸、東洋鋼鈑が交流会 相互訪問で研さん【金曜記者レポート】
 下松市の2大企業、日立製作所笠戸事業所(川畑淳一事業所長)と東洋鋼鈑下松事業所(荒瀬真事業所長)の現場管理監督者同士の交流が昨年から始まっている。異業種ながら“ものづくり”に携わっている共通点があり、互いの生産現場の見学や懇親会で得たヒントを職場の活性化に生かそうとしている。(山上達也)

創業97年、83年で初の交流

 日立製作所笠戸事業所は97年前の1921年、東洋鋼鈑下松事業所は83年前の1935年の創業。共に戦前からの長い歴史があるが、これまで一度も生産現場の管理監督者が交流することはなかった。
 しかし日立は英国向け高速鉄道車両の大量受注で空前の活況を見せ、東洋鋼鈑も抗がん剤による副作用回避が期待される遺伝子解析キットを山口大学と共同で開発して初めて医療分野に進出を果たし、「互いに交流して学び合いたい」という機運が生まれた。

東洋鋼鈑を見学する日立笠戸の人たち=東洋鋼鈑提供

東洋鋼鈑を見学する日立笠戸の人たち=東洋鋼鈑提供


ものづくりの「本音の会話」

 交流しているのは日立が社内資格の工師や工師補、工匠の資格を持つ製造現場責任者の特称会(大谷時博会長、76六人)、東洋鋼鈑は製造現場の責任者の職長会(有馬徹会長、150人)。

東洋鋼鈑の有馬職長会長

東洋鋼鈑の有馬職長会長

日立笠戸の大谷特称会長

日立笠戸の大谷特称会長

 1回目の交流は昨年9月13日と15日に東洋鋼鈑が日立を訪問し、2回目は11月2日と6日に日立が東洋鋼鈑を訪ねた。毎回参加者を変えて多くの責任者が参加できるようにし、4回の合計で日立40人、東洋鋼鈑46人計86人が参加した。
 日立ではさまざまな国内外向けの鉄道車両の製造現場を見学。有馬会長(51)は「予想していた自動化された生産ラインではなく、技術を持つ作業者の腕で多くの材料や無骨な部品が洗練された美しい鉄道車両に形作られていく姿に驚いた。作るものは違っても目指すところは同じだと理解し合えた。今後も現場で戦う力を互いに養う場にしたい」と話す。
 東洋鋼鈑では冷延や焼鈍、表面処理、フィルムラミネートなどスチールの製造工程を見学。厚生労働省の「現代の名工」に選ばれ、笠戸事業所内でただ一人の工師の大谷会長(55)は「ものづくりの本音の会話ができた。目の前でものができていく過程で、機械を扱う作業者によって品質も効率も左右されることを知った」と話している。

「大量退職のノウハウを」「刺激ある交流を」

 見学後は飲食をともにする懇親会が開かれ、製造現場での苦労や工夫を紹介し合った。中には30年ぶり、40年ぶりに再会する高校などの同級生もおり、これをきっかけに社の壁を超えた付き合いが復活したケースもあるという。

懇親会=東洋鋼鈑提供

懇親会=東洋鋼鈑提供

 両社は今後も定期的に交流していく予定。有馬会長は「間もなく直面する技術者の大量定年退職に現場としてどう対応するか、一足先それを経験した日立のノウハウに学びたい」▽大谷会長も「下松でものづくりに携わる者同士の交流は互いに大きな力になる。刺激のある交流を今後も続けたい」と意欲を見せている。

最新鋭機で省エネ、効率アップ

日立の“英国特需”で導入【下松】日立協力会社の弘木工業、弘木技研
 英国向け高速鉄道車両の大量受注で好況にわく下松市の日立製作所笠戸事業所(川畑淳一事業所長)の協力会社、西豊井の弘木工業(弘中伸寛社長)と葉山の弘木技研(弘中善昭社長)に最新鋭のファイバーレーザー搭載のパンチレーザー複合加工機が導入された。1台約2億円で、ともに国の補助を受けた。従来のものより効率的に精度の高い製品が生産でき、作業時間短縮、電気代、メンテナンス費用も縮減できる。(山上達也)

弘中弘木工業社長

弘中弘木工業社長

弘中弘木技研社長

弘中弘木技研社長

 両社はともに1950年に市内で創業した家具製造業の弘中木工所が源流。伸寛社長の義父と善昭社長の父親は兄弟で、伸寛社長は下松商工会議所で会頭、善昭社長は副会頭。

弘木技研が導入した最新鋭機

弘木技研が導入した最新鋭機

金型の自動選択装置

金型の自動選択装置

 弘中木工所は日立の鉄道車両の内装に家具製造で培った木材加工技術を生かして進出、61年に弘木工業に改称した。その際、家具部門は弘木家具店として分離独立したが、やはり鉄道車両の内装部門に進出して92年に弘木技研に発展した。
 弘木工業は鉄道車両の天井や床下部分の部品製造、弘木技研は配電盤ユニットやトイレ、客室の荷物棚など乗客や乗務員に身近な内装を手がけている。弘木工業の従業員は97人、弘木技研は74人。
 今回導入したのはアマダ製で、金属板にさまざまな形状の穴をあけたり切断する機械。奥行き10メートル、幅16メートル、高さ5.8メートル。これまでの加工機では300種類の金型から作業員が探して機械に取り付けるなど人手を要し、機械の作業スピードも速いとはいえなかった。
 新しい加工機では金型の選定から取りつけまでをプログラミング通りに機械がこなし、作業時間は従来機の5分の1。電力消費量は30%減り、メンテナンス費用も5分の1になるという。
 さらに“バリ”と呼ばれる金属切断時に加工面に生じる小さな突起も従来より少なくなり、その分、人の手に頼る溶接もしやすくなった。
 弘木工業は昨年10月に中小企業庁のものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業を利用して導入、弘木技研は1月11日に資源エネルギー庁の省エネルギー投資促進に向けた支援補助金を受けた。
 弘木工業の山田義則下拵え課長は「作業効率が上がった分、従業員がほかの仕事をこなせるようになった」と喜び、弘木技研の浜崎雄介下拵えリーダーも「技術を一層向上させて、より高品質の製品を世の中に送り出し続けたい」と話している。