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日本は「鉄の天井」

中特ホールディングス社長
橋本ふくみさん(54)

周南市

【PROFILE】はしもと・ふくみ
周南市生まれ。神戸学院女子短大卒。
廃棄物処理会社「中国特殊」社長をへて2012年、中特ホールディングス設立と同時に社長に就任。

 ―徳山商工会議所と新南陽商工会議所の新年互礼会に取材に行きました。出席者の99%は男性で地元経済界が男性社会であることを再認識させられました。

 ライフネット生命保険創業者の出口治明さんが著書で「高度経済成長期は物を作れば必ず売れる時代で、工場はフル稼働でお父さんにどんどん働いてもらう『工場モデル』が必要だった。必然的に女性に家庭のことが任されて社会進出が阻まれ、政府も配偶者控除で制度的にそのモデルを支えた」と述べています。
 地元企業の経営者は成長期を支えた世代が今も中心で「男性は仕事、女性は家庭」という考えが根強く残っています。お父さんが稼いでお母さんが家を守る「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」が現在も受け入れられているのが好例でしょう。

 ―周南市の審議会の女性登用率が市男女共同参画推進条例で40%にする目標を掲げながら、条例施行後14年間1度も達成していないことが明らかになりました。

 政府系金融機関の顧客でつくる組織の全国セミナーに参加したら、分科会で「女性グループ」がわざわざ設けられていて主催者の意識の鈍さを感じました。懇親会でも女性席が会場の中央に設けられ、違和感を覚えました。政府系金融機関でこれですから推して知るべしです。

 ―2009年にトヨタ自動車が米国でリコールを出し、役員が議会の公聴会に呼ばれた時、役員全員が男性で現地では異様な光景に映ったそうです。

 出張で東南アジアによく行きますが、どの国も女性が要職に就いています。儒教の国の韓国でさえ女性大統領の誕生など登用が進み、日本の後進性が浮き彫りになっています。女性先進国の米国でも「ガラスの天井」との言葉があるのなら、さしずめ日本は「鉄の天井」です。

 ―山口県の県民意識調査で「男性は仕事、女性は家庭」という考えに対する賛否を聞いたら女性の回答で賛成が27.6%に上りました。全国的にも高い数字で「山口は女性も家庭に収まることを望んでいる」と言われます。

 女性が本心からそう思っているかどうかを見極めるべきです。社会進出しにくい状況があってやむなくそう思っているのかもしれません。
 日産自動車の専務執行役員の星野朝子さんが「日本の会社は女性社員に男性と同じチャンスを与えていない」と言っています。「あの女性従業員は子育てや親の介護があるからハードな仕事は任せられないと周りが勝手に気を回して結果的に平等なチャンスを提供していない」と。
 日産が南米に新拠点をつくる時、妊娠中の女性社員に思い切って「責任者として行ってほしい」と言ったら二つ返事だったそうです。彼女は現地で出産し、たくましく働いていると聞きます。この逸話は女性本人が仕事に消極的なのではなく、職場が意欲を引き出していないことを表しています。

 ―産業界は女性の活躍を含め、働き方改革が求められています。

 生産性を上げることに尽きます。生産性を上げれば労働時間が短くとも収益が確保できます。ITやAI(人工知能)に任せられる仕事は任せる方向になるでしょう。
 15年度の中期経営目標に女性比率を22年度までに35%に上げる方針を掲げました。現在は25%。実現に向けて着実に進めます。