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医療機開発に新境地

機械加工「ミヤハラ」社長
松原忠彦さん(47)

周南市

【PROFILE】まつばら・ただひこ
1971年徳山市(現周南市)生まれ。広島修道大学卒。94年(有)ミヤハラ製作所入社。
製造課長を経て2011年に3代目社長に就任。創業者は祖父故義視氏、2代目社長は父故克博氏。

 ―近年、医療機開発に乗り出していますね。

  昨年から、刺しても痛くない無痛針を刺す装置の開発に東海大の槌谷和義教授(精密工学)と共同で取り組んでいます。

 ―無痛針は大手医療機メーカーが既に実用化していますが。

 大手メーカーの針は直径180マイクロメートル(0.18ミリ)ですが、こちらは50マイクロメートル(0.05ミリ)で蚊の針の細さに匹敵します。蚊に刺されたら後からかゆくなりますが、刺された瞬間は痛くありません。それと同様に無痛針も全く痛みを感じません。

 ―注射器の針として使うのですか。

  針自体にセンサーを取り付け、それを細胞に穿刺(せんし)する装置の開発を担当しています。モデルは蚊です。蚊は針を細かく前後に動かしながら人間の皮膚に突き刺します。その動きに着目し、針を前後にバイブレーションさせながら刺します。そうすると細胞を死なせずに刺すことができるそうです。

 ―それが実現したら医療に大きな影響を与えそうですね。

 細胞を生きたまま中から物質を抽出でき、人間の情報が取れます。医療現場への波及効果は大きいでしょう。試作品が完成し、商品化に向けてテストを重ねています。

 ―ほかにも山口大と共同で医療機開発を進めているそうですね。

 膵臓(すいぞう)手術で膵管を胃に縫いつける吻合(ふんごう)の補助具を2年前に開発し、実用化しました。肝臓再生システムを全自動化する取り組みにも参画し、細胞培地の保温装置を開発しました。

 ―機械加工が専門のミヤハラにとって医療分野は未知の世界と思いますが、進出のきっかけは。

 山口県の産業育成制度に背中を押されました。県は医療、航空宇宙、エネルギーの3分野で地域産業を育てようと集中投資しています。医療分野ならわれわれがこれまで培った技術を生かせるだろうと足を踏み出しました。

  ―手掛けている医療機はすべて「製品」です。従来の部品メーカーからの脱却も図っているのですか。

 製品メーカーの下請けとして部品を作って納める本業が主力なのはこれまでと変わりません。ただ、下請けは元請けの意向に左右され、経営が不安定になりがちです。コンパクトデジタルカメラの組み立て装置などを中心に下請けで作っていましたが、スマートフォンに席巻されて市場が一気にしぼみ、年間売上高が半減して経営的に非常に厳しい状況に直面したことがありました。
 医療機器関連分野を事業の柱の1つにすることで安定経営につなげたいと思っています。それと、日々油まみれになっているわれわれから生み出された技術が医療の最先端に活用される夢と誇りを社員に持ってもらいたいことも新分野にトライした大きな理由です。