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機能商品事業の更なる強化へ

東ソー代表取締役専務執行役員・南陽事業所長
田代 克志さん(62)
[周南市]

【PROFILE】たしろ・かつし
1956年福岡県生まれ。九州大大学院化学機械工学専攻修了。
81年入社。四日市事業所長を経て2015年6月から南陽事業所長。

 ―2019年3月期決算は売上高8,800億円と過去最高を予想しています。

 為替が1ドル110円前後で安定し、原油価格も比較的低い水準で推移しました。需要も堅調でいい環境がそろい、16年度に始まった中期経営計画の業績目標を前倒しで達成できました。

 ―経営計画と言えば公表は実に31年ぶりでした。

 以前の計画は多方面に手を広げ、一気にジャンプアップする絵を描いたため、実務が付いていけず空回りしました。それを教訓に得意とする事業と身の丈に合った成長戦略に絞り込み、堅実性を重視し、確実に実行する方向性に改めました。

 ―事業は汎用商品と付加価値の高い機能商品を両輪とするハイブリッド経営です。

 汎用商品事業と機能商品事業の比率は売上高・利益とも約6対4です。汎用商品は市況に左右されやすい一方、底堅い需要があります。機能商品は利益率が高く市況の波にも強い。今後は機能商品事業を更に強化し、将来的には比率を逆転させる考えです。

 ―どの企業も人手不足に頭を抱える中、東ソーは新年度、南陽事業所で72人の高卒者を採用しました。

 東ソーは関連会社を含めて山口・周南での地域貢献に向け、安定した雇用を提供する義務があり、今後も安全安定運転を続け事業拡大を継続します。

 ―東ソーの若手社員でつくるグループ「TRY!」の地元小学校での出前授業を取材しました。子どもたちに「東ソーって知ってる?」と聞くとほぼ全員手が挙がるのですが、「どんな会社?」と尋ねると途端に挙がらなくなります。素材メーカーの弱点かもしれませんが、実は東ソー製の素材は身の回りにあふれています。

 南陽事業所に昨年、新しい本館が完成しました。建材はすべて自社製品で建築もグループ会社が建設しました。「100%メード・バイ・東ソー」です。エントランスには製品を紹介するPRコーナーを新設し、東ソーを身近に感じるスペースとしました。来年には研究棟、研究付属棟、分析センターも加わり、東ソーのマザーファクトリーとしての「コントロールタワー」の機能を強化します。

 ―近年は企業にCSR(社会的責任)が求められています。

 「化学の革新を通して幸せを実現し、社会に貢献する」という企業理念を実践することがCSRにつながると考えています。
 地球温暖化対策では主力の自家発電設備において石炭に加えバイオマス発電を着実に進めます。化学の力を
活用し、空気中の二酸化炭素を回収し原料に使う検討も進め、SDGs(持続可能な開発目標)の実現を図ります。

 ―東ソーは来年創業85年を迎えます。1990年代に3期連続で赤字になる苦しい時もありましたが、現在は先 輩社員の努力もあり高収益性を誇っています。

 苛性ソーダの製造に始まり、石油化学、機能材、バイオと少しずつ事業を広げてきました。ブレークスルーは一朝一夕にはできません。研究開発陣の旺盛な探究心と粘り強い取り組みが多くの機能商品を生み、実を結んだと自負しています。特に機能材のジルコニアは工業化と市場確立が高く評価され、2018年度に大河内技術賞を受賞しました。「現状に満足した瞬間、衰退が始まる」ことを肝に銘じ、研究開発と事業化の歩みを止めることなく、世に求められる素材を生みだしたいと思います。