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ICT事業で成長

㈱トクヤマ 取締役専務執行役員 徳山製造所長

安達 秀樹さん(63)

【PROFILE】あだち・ひでき
1955年山口市秋穂生まれ。山口大学大学院工学研究科化学工学専攻修了。
81年入社。セメント製造部長、徳山製造所副所長を経て2013年に徳山製造所長。19年4月から現職。
6月21日に代表取締役に就く予定。

 ―2018年度決算は売上高3,246億円と過去最高を更新しました。

 主力の化成品、半導体関連製品の出荷数量が伸び、販売価格も適正価格に是正され、売上をけん引しました。徳山海陸運送㈱(周南市)の完全子会社化も実現しました。16年度以降増収が続き、マレーシア事業の撤退で2期連続で赤字に転落した14、15年度の低迷を克服しました。「伝統事業で日本一」「先端事業で世界一」を目指します。

 ―横田浩社長が今年の入社式のあいさつで「VUCA」(変動性・不確実性・複雑性・あいまい性)の用語を用い、経済見通しの不透明性を強調しました。

 米中貿易摩擦や中東情勢など不安定要素はありますが、次世代モバイル通信の5Gや車の自動運転化などICT(情報通信技術)産業の広がりが望め、見通しは暗くないと思っています。ICTはわが社の成長事業の柱で、半導体製造過程で多結晶シリコンなどの製品群を持っています。経営環境的には今は踊り場にいますが、今後はICTを中心に拡大方向に向かうと見ています。

 ―ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)に熱心な企業かそうでないかが投資の判断基準になるなど企業の社会的責任に対する評価が厳しくなり、企業は「儲け」だけでは生き残れない時代になりました。

 会社はもともと「世のため人のため」にあり、その原点に立ち返るべきだと思います。「化学を通じて暮らしに役立つ価値を提供しよう」と。顧客の満足する商品を出し、それで儲けて社員が元気になってまた前進する循環を確立したい。
 環境対策ではCO2削減とエネルギーの有効活用、省エネルギーに取り組んでいます。徳山製造所(周南市)の自家発電の主力は石炭火力発電ですが、これをバイオマス混焼発電への転換に挑戦します。東工場に周南パワー㈱が出力30万キロワットのバイオマス混焼発電所を建設中で22年に運転を始めます。将来的にはバイオマスの発電比率を20%に引き上げる考えです。排ガス中のCO2を取り込んで有効活用する技術開発も進めます。

 ―㈱トクヤマは昨年、創業100周年を迎えました。

 塩素から塩化ビニル、水素から多結晶シリコンへと1つの原料から出たモノを無駄に使わず、すべてを使い切るのが化学工場の理想形なのですが、これを創業以来の基本方針として貫いたことが100年続いた要因だと思います。
 4代目社長(蔭山如信氏)が「1つの原料からさまざまなモノを作って事業を広げることが本当の『多角経営だ』」と言いましたが、先輩方がそれに取り組み、無駄のない生産体制を築きました。
 大量にモノを作って売る時代は去り、今後は隙間を埋める事業が中心になるでしょう。世界と戦うにはよそにまねのできない高機能、高品質、高付加価値の製品を世に送り出し続けることしかないと思っています。
 ㈱トクヤマは地域の人々に愛着を持たれていることを実感します。周南の地域経済の一翼を担う誇りと責任を持ち、次の100年に向けて前進したいと思います。