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海外進出に夢求め

藤田鉄工(周南市)社長

藤田禎弘さん(55)

【PROFILE】ふじた・さだひろ
1963年周南市生まれ。84年入社。常務を経て2008年から現職。
徳山青年会議所理事長、周南市PTA連合会長も務めた。

 ―フィリピンへの進出を計画しています。

 年内に現地法人を立ち上げてルソン島に工場を建設し、2021年の創業開始を予定しています。主力製品の大型精密機械加工部品を製造し、日本に輸入します。従業員7人でスタートさせ、初年度は3,000万円の売り上げを目標にします。将来的には15人態勢、売上高6,000万円を目指します。

 ―海外進出の考えが生まれた理由の1つに外国人技能実習制度に対する疑問があったそうですね。

 制度の本来の目的は外国人を実習生として日本の労働現場に招き入れて技術を習得し、母国に持ち帰って現地の産業に生かすことだったはずです。しかし、実態は人手不足の穴埋め、低賃金による使い捨てに成り下がり、趣旨とかけ離れてしまいました。母国に帰っても日本で勤めた業種と全く別の仕事に就かざるを得ない例も多く、こっちで学んだ技術が宝の持ち腐れになっています。

 ―現地工場の設立で制度の矛盾が解消されるのですか。

 当社は現在、3人のフィリピン人男性を実習生として受け入れています。実習終了後、彼らを現地で従業員に雇い、現場のリーダーに育てたいと思っています。そうすれば日本で覚えた技術をそのまま生かせ、技能継承が途絶えません。工場が軌道に乗れば実習生の受け入れ枠を拡大して習得機会を増やし、安定的に現地に従業員として送り込みたいと思っています。

 ―会社側の利点は?

 フィリピンは人件費が日本の5分の1でコストが抑えられます。人手不足対応にもなります。労働者も勤勉でいい意味でのハングリー精神があります。英語圏で基本的に英語で対応できますし、治安も落ち着いてきました。行政も企業誘致に熱心で税金の減免など優遇措置も手厚い。人口は1億人を超え、経済成長率も高く、市場としての魅力もあります。
 当社は設備投資で定期的に工作機械を更新しますが、用済みの古い工作機も廃棄せずに取っておいてあります。国内の生産現場ではお払い箱になっても現地ではまだまだ現役として活躍できます。フィリピンは産業機械の輸入通関に規制がなく、搬出手続きもスムーズに進むでしょう。

 ―労働者側、会社側にとってウィンウィンの関係でいられるのですね。

 技能継承を目的とする外国人技能実習制度の趣旨を取り戻す意義があると思っています。
 2008年のリーマンショクで経営に打撃を受けてから、私は数字ばかりを追い求めてきた気がします。数字も大切ですが、企業経営の「夢」や「ロマン」も語りたい。海外進出は夢の実現に向けた一歩だと考えています。