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経済 : 下松市のニュース
[この人に聞く]㈱日立製作所笠戸事業所長 佐川 哲さん(53)
経済下松市地元経済界と連携、地域貢献強化
山口県下松市の㈱日立製作所笠戸事業所の新事業所長に、前水戸車両システム統括本部長の佐川哲さん(53)が4月1日に着任した。4月27日には日立笠戸製の台湾向け特急電車の陸送イベントが市内で開かれ、約5万人でにぎわった。笠戸事業所の現状と今後を語ってもらった。
(聞き手・山上達也)
電車のモーター回転の電源設計に尽力
―就任のお気持ちをお聞かせ下さい。
佐川 笠戸事業所は日立の中でも長い歴史を持ちます。新しい風を吹き込み、笠戸事業所のいいところをしっかり伸ばしたいです。
―笠戸事業所での勤務も初めてですか。
佐川 ずっと鉄道車両製造に携わって来ましたので、笠戸事業所に出張で来ることはよりありました。
―これまでどんな業務をされましたか。
佐川 水戸事業所で電車を走らせる「インバーター」というモーターを回す電源の設計をしていました。その装置は台湾向けなど笠戸事業所製の電車に設置されています。
―やりがいのあるお仕事でしたね。
佐川 実際にレールの上を走り始めた電車を見ると、作った者として誇りを強く感じます。業務上の試乗もですが、個人的にも乗客として自分が手がけた電車に乗り、乗り心地を実感しています。
「鉄道事業は1社だけではできない」
―笠戸事業所の現状はいかがでしょうか。
佐川 台湾の特急電車やパナマモノレールの受注で活況が続いてきましたが、今年度下期には落ち着きます。鉄道インフラの景気の波は3年遅れです。その後は昨年5月に受注した台湾新幹線の車両144両(12編成)の生産が始まります。
―コロナ禍の影響は受けましたか。
佐川 コロナ禍では出社制限など業務遂行の面で難しい時期が続きました。しかしDX化が進んでデジタル面のスキルが上がりました。業務の一次対応が早くなり、対面とリモートの使い分けによって、対面活動の価値がより高まりました。
―日立笠戸協同組合(HKK)など地元企業との連携はいかがでしょうか。
佐川 鉄道事業は1社だけではできず、HKKなど地元の関連企業を対等なパートナーとしてできるものです。共に事業を作り上げ、市場や情報の開示を通じて連携を深めます。
陸送イベント「機会アレンジし進めたい」
―日立の台湾向け電車の陸送イベントは大盛況でしたね。
佐川 企業が何をしているのかを皆さんにご理解いただく大切さを感じました。企業も地域の一員で、地域が元気になるための活動が大切です。うまく機会をアレンジできれば、同様のイベントを続けたいと思います。
―お隣では日立ハイテクの半導体製造装置の新製造棟が建設中ですね。
佐川 日立ハイテクさんとは普段から連携しています。我々とハイテクさんは事業の中身が違いますが、地域の活性化に向けたいい影響があります。
―行政や経済界との連携はいかがですか。
佐川 世界も日本も市場は刻々と変化し、カーボンニュートラルやDI(ディフュージョン・インデックス=企業の業況感や設備、雇用人員の過不足などの判断材料を指数化)など一企業では進めきれないことが増えています。行政や商工会議所などの地元経済界、近隣企業と考え方を共有し、相互協力がでればと思います。
―市民の皆さんへのメッセージをどうぞ。
佐川 我が社も地域の一員です。いつまでもこの地域で事業が続けられ、地域に貢献ができるように頑張ります。引き続きご支援をお願い申し上げます。

佐川さん
[プロフィール]
佐川哲(あきら)さん
茨城県日立市出身。父親も日立製作所に勤務した親子2代の日立ファミリー。日立市内の小中高校を卒業し、北海道大学工学部電気工学科を卒業、同大学院の電気工学修士課程を修了した。1995年に日立製作所に入社し、2013年から1年半は英国の日立レールヨーロッパに出向した。本社に戻って車両電気システム設計部長や設計本部長、水戸車両システム統括本部長を務めた。趣味は旅行で、絵画鑑賞や遺跡めぐりなどを楽しむ。妻と2人暮らし。