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[金曜記者レポート]【山口県】JR西日本 車掌はどこへ?ワンマン化4カ月 車内巡回、無人駅改札なく
記者レポートその他山口県内のJR山陽本線の普通列車で、車掌の乗務が原則的に廃止になり「ワンマン化」されて4カ月が過ぎた。車内では乗車券の販売など乗り越しの対応がなくなり、無人駅で車掌が乗車券の回収をすることもなくなった。ワンマン化が乗客へのサービスやJR西日本の業務にどんな影響を与えているかを追った。(山上達也)
昨年からワンマン化へ側面カメラ
車掌は旅客用ドアの開閉▽事故などの緊急停車時の対応▽出発信号の確認と出発合図▽停車駅と停車時間のアナウンスなどの車内放送▽乗車券を持たずに乗車した乗客への乗車券の販売や行き先の変更などに応じる車内改札▽車内設備や旅客の秩序維持のための車内巡回を担ってきた。
とくに車掌が「出発進行!」と叫ぶ出発合図がないと運転士は列車を出発させることはできず、列車の安全運行を保障する重要な役割を担当してきた。
しかしJR西日本は昨年1月からワンマン運転の導入を想定して車両の側面にカメラを設置し、車掌が担当してきたホーム上の安全確認を運転士ができるか、検証する取り組みを進めてきた。
その結果、同社は今年3月18日のダイヤ改正に合わせて山陽本線は岩国―下関間で終日、ワンマン列車を運行することにした。対象は4両編成以下の列車で、徳山―岩国間の5両編成の列車は車掌が乗務している。
キセル乗車、車内トラブルに不安
車掌が乗務しないワンマン化で、これまでと比べてどんなことが変わったのだろうか。
車掌が列車の後方から客の乗降を確認した上で操作していたドアの開閉が、ワンマン化になって運転士が駅で停車するごとにホームに降りて客の乗降を確認した上で、開閉する形に変わった。その後、運転士は運転台に戻って車内にある車両側面のカメラで安全を確認し、列車を発車させる。
そのため身体障害者や高齢者の乗降を、運転士がこれまでの車掌に代わって介助することは不可能になった。
車内でも車掌の巡回がなくなったため、痴漢などの犯罪抑止が保たれる担保がなくなった。トラブル発生時は客が車内のSOSボタンを押して列車を停車させるしかなく、その後の現場対応は運転士だけにゆだねられる。
無人駅ではこれまでは車掌がホームに降りて乗客から乗車券の回収(改札)をしていたが、ワンマン後、運転士はそこまで手が回らない。結果、キセル乗車の温床となっていると見られ、乗車駅と降車駅がともに無人駅の場合は、無賃乗車でもおとがめなしというケースがありそうだ。
「車内巡回で安心感」「無人だと不安」
乗客の反応はどうだろうか。1日に徳山駅から防府駅まで乗車した女子高校生(17)は「これまでは車掌さんが回ってきてくれると安心感があったけど、今は何かあったらどうしようという不安がある」という。
1日に新南陽駅のホームで乗車を待っていた男性(67)は「駅に駅員がおらず、車内に車掌がいない。これでいいのだろうかと思う」と不安そうだった。
一方でJR西日本は徳山駅―下関駅間の全駅で交通系ICカード「ICOCA」を導入し、山陽本線は神戸駅から下関駅までの全線がIC対応になった。同社広島支社は取材に「ワンマン化になってもお客様に安心していただけるように安全運行に心がけていきます」と話していた。