コラム「一言進言」
株価バブルは地方を幸せにしない
~あくまで徹底した少子化対策を~
■ 日本の株価はバブル時代の最高値を超えてきた。株の世界だけはバブル期を迎えているようだ。40年前に「日刊新周南」を創刊したころが、まさにバブル時代の後半だった。全国の地価が高騰し、株価も天井知らずの様相だった。「徳山公論」から周南4市をエリアにした、ちゃんとした地方紙の確立を目指し、多くの賛同者を得て何とか発刊にこぎつけた。バブルの恩恵も多少あっただろう。
■ 夜の巷ではクラブが5店も存在し、連日酔客で賑わっていた。公害の関係で企業の総務担当者は漁協の幹部の接待で苦労していた。企業も接待交際費をふんだんに使えて宴会も連日だった。旧徳山市は地価もウナギ上りで、近鉄松下百貨店前は常に県下一番で坪当たり700万円、800万円とも言われていた。マハラジャがオープンしたのもこのころだ。
■ 当時仲の良かった某都市銀行の支店長は「いくらでも融資するからうちの銀行株を買え」と言っていた。仲間の何人かは付き合いで購入していた。今でもそうだが資金繰りで汲々していた私は無理だったが。しかし、1年後には倍近くに高騰して儲かった人もいた。その後に大損した。
■ 土建業も景気が良く、毎日夜は飲み会で、昼間はゴルフを楽しんでいた。やっかみもあったが、これが未来永劫続くわけはないと思っていたので「こんなことが続くわけがない。今のうちに技術者を養成したらどうだろうか」と語っていたのを思い出す。それから4、5年でバブルははじけた。元気だった土建業者の多くが姿を消すか、縮小した。夜の巷もそれ以来1店、また1店と姿を消し、今ではクラブと呼ばれる店は消滅した。
■ 株のバブルで儲けるのはいつの時代も富裕層だけだ。すそ野は狭い。株と無縁の世界にいると実感が全く湧かない。庶民の生活には一向に反映することもない。周南地区でも働く人は圧倒的に中小、零細企業が多い。下請け、孫請けまでお金が回り、地域で商売しているお店が潤う形ができることを願うばかりだ。
■ 県もようやく人口減少対策に取り組み出した。微々たるものだが、ないよりましだ。前明石市長の泉房穂さんが言うように、まずは子どもを増やせる環境つくりだ。地域経済の源は子どもを増やし、人口を増やすことだ。今年、下松市と光市の市長選挙があるが、今まで経験したことがないような少子化対策、若者定住対策を訴える市長候補を期待する。株価は関係ない。
(中島 進)
