コラム・エッセイ
No.03 8月21日(金)③
〜ベトナム一人旅の記録〜 医療と福祉の国際協力の原点を求めて 記者・NPO国際ボランティアIMAYA理事 山上達也内側からしか施錠できない!
ベトナム国鉄の寝台列車「SE19」は寝台車、座席車、食堂車が連結されている。筆者は寝台車の2人用個室を2人分支払って独占したが、ここで重大なことに気づいた。
部屋の鍵が内側からはかかるが、外側からはかからないのだ。トイレの個室のドアと同じ理屈で、鍵といってもトイレによくあるバーそのものだ。
つまり少しでも部屋から離れようなら、財布やパスポートなど貴重品はすべて身に着けないといけない。スーツケースは自転車用の鍵のかかるワイヤーで個室の柱にくくり付けるしかない。
まして4人部屋(2段ベッド2つ)や6人部屋(3段ベッド2つ)で他人と相部屋になると、もう見知らぬ初対面の客同士の“性善説”に頼るしかないのだろう。
筆者のように完全なプライベートルームを確保しても、離室時はかなりの決心が必要になる。トイレに行くにも、一刻でも早く自室に帰りたくなって落ち着けない。まして車内を探検したり、食堂車でゆっくりする気持ちにもなれない。
トイレで“謎のホース”に悩まされる
そうこうするうちに寝台列車はハノイ駅を発車した。車内アナウンスはない。列車はハノイ駅とホーチミンのサイゴン駅とを結ぶ大動脈の「南北線」を走るが、全線が単線で非電化。周南地域なら岩徳線のようなスタイルだ。ディーゼル機関車がごう音を立てながら客車をけん引する。
発車直後、民家やカフェが線路ギリギリの狭さに立ち並ぶ「トレインストリート」を通過。車窓から見えるきらびやかさはたとえようのない美しさだ。
市内を離れると揺れが半端でなくなる。まるで波に揺れる小舟のようだ。トイレに行くと便器の水が勢いよく波打っていた。
トイレ内には謎のホースがあり、先端はシャワーヘッド。車掌に聞くとどうやら用を足した後にレバーやボタンを押し、水でお尻を洗うのだそうだ。
どうやったらそうできるのかわからない。だからといって車掌に「私の前でやってみてください」ともいえない。ここは日本式に用を足すしかない。
揺れでスープが波立つフォー、味が混ざる
車内には共同使用の洗面台があり、無料で使える給湯機もある。自室内には2人分の軽食ボックスが置いてあり、バナナや菓子、ミネラルウオーターもある。あらかじめ寝台料金に含まれているので自由に食べていい。
軽食ボックスは2種類のパンとミカン、牛乳というシンプルさだが、意外と腹持ちがいい。マーガリンやジャム、使い捨てのバターナイフもある。1食は夕食、もう1食は朝食にすることにした。
廊下ではワゴン販売が頻繁に行き来している。ワゴンにはめん料理のフォーのスープが入ったバケツがあり、めんが入っているどんぶりにスープを注いで提供してくれた。
車内の揺れでスープは高波を打ち続けていたが、その分、味がどんぶり全体に混ざったのか、おいしかった。車窓の夜景を楽しみながら、米粉製のきしめんのような平たいめんを牛肉や鶏肉のスープでいただく味は最高だった。
寝台列車SE19の2人用個室
“謎のホース”があるトイレ

《動画》寝台列車SE19の