2025年02月08日(土)

コラム・エッセイ

№42 人物考3・ミスター長島に三原脩に衣笠に…50年前ボールボーイの私が受けた刺激は今に続く

独善・独言

 大学生の頃、岡山県営球場でボールボーイのアルバイトをしていた。公式戦と春秋のオープン戦、合計10数回であったか。その時に子ども心に=はたちの私の記憶に残った7人を紹介したい。

 ㊀阪急とのオープン戦、34歳の長島は私の横のバットケースに腰をおろし試合を観ていた。新人河村捕手が二塁ベース上でケガをした。私が『長島さんはケガがありませね』と声をかけると『皆さんが知らないだけだよ。私の体は方々傷んでいるのよ』と様々に続いて話し始めて終わらない。まるで友人に話しているような熱心さ、見も知らずの学生に向かってである。人生のなかでは他に類のない最も新鮮で強烈な印象の出遭いであった。

 なお①柴田や土井は彼を「ミスター」と呼んでいて自然だった。なお②その桜ケ丘高卒の河村選手を長島は「彼はレギュラー捕手になるよ」と私に予言した。その通りになった。なお③通常ボールボーイは試合前の練習で球拾いほかのお手伝いをするが、巨人はスタッフの職員が隅々まで揃っていて出番がなかった。他チームとの経営力の差をみせつけられた。以上「なお話」を3つ。

 ㊁トスバッテングの相手をしたのは高木守道との一度だけ。『練習相手を頼む』と自分のグローブを私に差し出してきた。これが名手高木のグローブかと興奮したが20球くらい1球も暴投をださず、相手もすべての球を私に打ち返して終わった。「ありがとう」の言葉はプレー同様スマートであった。

 ㊂ほとんどの選手は我々ボールボーイを同好の仲間扱いで、見下したり無茶を言ったりすることはなかった。が、一人だけ、中日の江島という同年配の選手のヒヤカシに頭にきた。『こんな選手を一流の選手にしてはいけない』と呪い続けたら結局二流選手に終わった。

 ㊃逆に…法政の主将でドラフト1位で大洋に入団してきた野口は我々にまで「コンニチハ」と帽子をとって挨拶する。プロはこのような優等生選手が通用する場所ではあるまいとの思いをもったが、やはりレギュラーにほど遠かった。
ただ、後に球団職員として成功したと聞いて安堵しながら納得した。

 ㊄ベンチでヤクルト三原脩監督が4番候補中村国昭を諭していた。『いいですかオフの過ごし方があなたの将来を決めますよ』…20歳過ぎの若者に柔らかく丁寧語で諭していた。名を成した人間はこのような爺様になるのかと教えられた気になった。

 ㊅衣笠はまだレギュラー途上であった。弾ける笑顔と大声で躍動感があふれていた。ヤンチャという風評とは相い入れない爽やかさであった。応援したくなった。守備位置に着いたら常にスパイクで地面をならし続ける彼の下向きな姿もまた彼らしく好きであった。

 ㊆ベンチ裏通路で平光審判は大洋の江藤慎一に最敬礼の挨拶をしていた。これでは江藤の打席ではきわどい球はすべてボール判定になるだろうと思わせるような大人の世界と見た。その1年後、その平光は野球界の頂点にたつ神様の川上監督を退場処分にした。私的な感情を超えてジャッジのできる信念の男なのだ、江藤にもきっとその姿勢を貫いたのだろうと思い直した。彼は後輩審判から「審判先生」と呼ばれていたらしい。

 王も山本浩二も山田久志も注目したはずなのに何も思い出せない。さらに誰が活躍した、どんなことで盛り上がったかなど一場面も浮かんでこない。50年前の私は野球そのものでなく、野球界の著名人から何かを学ぼうとしていたからかもしれないとの自慢気な思いに至る。

 しかし、㊄の話し…部下をもつ立場になった60歳前の私は三原の対極にあるようなパワハラ指導であった。よって仕事を辞めたら誰も寄りつかなくなる。結局先人に何も学ばなかったということか。

…どうでしょうか。

講演請負業 阿武一治 kazuharu.anno@gmail.com

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