コラム・エッセイ
No.110 私話し11・播州竹田城、木次線亀嵩駅、三河松平郷、但馬湯村温泉…私の胸に迫ったロマンの旅先を7つ…計17ケ所
独善・独言念願だった「三河松平郷」を訪ねた。この機にこれまで寄稿したロマンの地A表10先に7先を追記する。独りよがりで偏っている。ご容赦を。

⑪城をひとつだけといえば「播磨竹田城」。映画「天と地と」のロケ地になった折に周囲の立木を切り倒したら“天空の城”が突如浮かびあがった。いかにも中世の山城という風情である。30分登ると高倉健の最後の映画「あなたへ」のなかで田中裕子を見初めた本丸跡に立つ。播州の山々が全方向から迫る。
⑫映画に誘われて3度行った場所…「雲州木次線亀嵩駅」。「砂の器」のクライマックス、親子の別れのシーン…ここで泣けない人はまずあるまい。原作者松本清張の父はこの近くの出身らしい。うまく人生が送れず自らの故郷のことだけを自慢していた父…私には清張親子の感情がこのシーンに移記されているようで、このことを思うとさらに泣けてくる。
⑬川なら「庄内最上川」。『熱き日を海に入れたり最上川』…鳥海山の山小屋風のホテルから眼下に眺める最上川は、この芭蕉の句のごとく雄大に迫ってくる。圧倒される。藤沢周平原作のドラマでは最上川河畔の菜の花の先に雪の鳥海山がそびえる描写が定番になっていてウレシイ。なお、ホテルの料理は他に例がない独創性があって一番とは妻の言。
⑭その鳥海山も捨てがたいが、山といえば富士…裾野から山頂まで目いっぱい観える「御殿場」。家康が駿府から江戸を往復するときの常宿があったのでこの名がついたそうな。旧東海道は公式道路としては箱根越えだが、関所がなく自由、距離が15キロ程度短い等の理由から、この足柄山越えをし御殿場経由で沼津に向うルートも重用されたらしい。私なら富士が迫ってくるこの道を選ぶ。
⑮歴史…最近とうとう訪ねることができた徳川家発祥の地「三河松平郷」。司馬遼太郎は地方地図でこの地を発見して興奮して訪ねている。三河湾に流れる矢作川の最上流にあり、空が両側の山に遮られる狭隘な土地である。鹿野の奥まった山里をイメージしていただきたい。徳川は何ら特別の価値も見いだせないこの地からよくぞ国のリーダーに成り上がったなと感慨にふける。周囲の酒井、大久保、平岩、菅沼、鳥居、井伊などの地侍は徳川家の与力を選択した、そして、その後大名や旗本、明治以降は華族として繫栄する一族になる。私はこれら沸きあがるロマンに司馬遼以上に興奮しているのである。
⑯温泉…私にはヌルヌルするとか、青や茶色にに濁っているとしか良否の判断基準がないが、一ケ所だけと聞かれれば冬の「但馬湯村温泉」。妻は「この湯に入れば昼まで上着がいらない」とおっしゃている。当地は「ドラマ夢千代日記」の舞台になっている。積もった雪を押し分けるようように湯気が吹き上げている川端に立てば、ショールを巻いたあの切なげな吉永小百合が現われてきそうな…そんな風情の温泉街である。
⑰「下関吉田」という旧宿場町の街中に「右山陽道左萩道」という石碑がある。この碑をあの吉田松陰も高杉晋作も奇兵隊の隊士達も眺めた瞬間があると思うと万感迫るものがある。当地で訓練を受けた奇兵隊は、藩の守旧派打倒のためにこの碑のそばを萩に向けて隊列を組んで進撃を始めたのだ。今この宿場町で昔日の繁栄が偲ばれるものは何もない。この碑だけが寂しく残っている。
以上の“私の胸に迫った”17ケ所のロマンの地…皆様何ケ所を訪ねておられるか。マニアックが過ぎるかもしれないが、是非とも私のロマンを確かめに訪れてほしいと思う。
…がどうでしょうか
