2024年05月20日(月)

コラム・エッセイ

No.25 「悲しき農村」⑥ 病虫害と農薬・肥料(5)

中須里山通信 形岡 瑛

 鉱山では鉱夫が入る前に、坑内の安全確認のためカナリヤが持ち込まれていた。カナリヤは有毒ガスが発生しているとぴたっと鳴くのを止める。

 ネオニコ農薬に対して、まっさきに異変が見えたのがミツバチだ。養蜂業者が被害を目の当たりにしたからだ。その他の昆虫や水生動物、鳥類そしてヒト、生態系全体に及ぼしている被害は目立たなかった。

 ネオニコ農薬によるミツバチの被害は、巣に帰れなくなり、異常な興奮状態が収まらず死ぬ、群れごと消える、女王バチの誕生数の減少などが見られている。(*1)

「浸透性殺虫剤(*2)の生物多様性と生態系への影響に関する世界的な統合評価書更新版」には以下のような報告がある。

「クロチアニジンとチアメトキサムに曝露した女王バチは卵巣が肥大化し、受精?に貯めた精子の質と量が低下」、「きわめて低用量のイミダクロプリドへの曝露は…女王バチの生存率を低下させた」「曝露に関連した卵の孵化率低下と女王バチの死滅」など(*3)で、これらの症状は、神経伝達物質を変質させ撹乱するネオニコ農薬の作用によるもので、昆虫などにとどまらず、鳥類、哺乳動物、ヒトにも及んでいる。(*4)生命活動における情報伝達の仕組みは同じだからである。ミツバチの犠牲をきっかけにその全貌が明らかになったのだ。

*1=星信彦神戸大学大学院教授「農薬による野鳥への影響」(『野鳥』2013年11月号)

*2=「浸透性殺虫剤}とは、浸透性と神経毒性を特性とするネオニコチノイド系農薬及びフィプロニルの総称

*3=(2020年3月日本語版)第2部パートA無脊椎動物「授粉昆虫に対するネオニコチノイドとフィプロニル(*5)の影響」

*4=黒田洋一郎、木村・黒田純子『発達障害の原因と発症メカニズム』第2版第8章(河出書房新社2020年))

*5=ネオニコチノイド系農薬と同様、浸透性で神経毒性があり、広く使われている。 【訂正】27日付け①3段目17行「消化」→「紹介」②5段目*3の「能楽」→「農学」

ミツバチの巣箱 (2月5日萩尾明記さんの蜂場)

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