コラム・エッセイ
No.24 ほーほーほおたるこい
美人薄命 走れ!おばさん 中村光子6月24日(木)仲良しのT子さんに誘われて、蛍狩に行った。今ふうに言えば、ホタル見物…かなあ。長いことホタルを見てない。
何年か前は、須金や金峰方面まで、ホタル見物に行っていたが、寄る年波には勝てず、加えてコロナ蔓延(まんえん)で、不要不急の外出を控えている。
行先は鹿野、以前、レストランを経営されていたF夫妻宅である。ガーデンテラスを開放しての、ホタル見物だ。招待された客人は20人をくだらないだろう。
そこは四方を山に囲まれ、はるか下の方からは、川のせせらぎが聞こえる。気温は20度前後だから、蚊がいないという。町の片隅で暮らしている我が家は、一日中蚊に悩まされて蚊取線香、オット、古かった、ノーマットボトルのお世話になっている。
お手製のやわらかいケーキとコーヒーに舌鼓を打っていたら、下の川から、青白い光を点滅させながら、ホタルが上昇してきた。
「ホラ、アソコ、あっ、こっちにも…」
ケーキを頬ばりながら、コーヒーを片手に見物人の喜々とした声に、しばし和んだ。
やがて、見物客は数台の車に分乗し、315号に沿って、点在するホタルの穴場へと案内された。
静寂な漆黒の闇の中、橋の欄干、聞こえるのは川の流れと、カジカの合唱、ホタルの乱舞にあがる歓声、そして、しじま。
その夜は、満月であった。時折、月は雲間から少し顔を出して、見物客を喜ばす。更にさえぎるもののない天空を背景にして、煌々と繰り広げる、満月のショウタイム。我々はきれい、キレイ、奇麗と思わず発するより他に、言葉を知らなかった。
ホタルは、世界の温帯から熱帯にかけて、ナント、2千種もいるのだ、そうだ。
山を背にした田舎に生れ、育った私の家の前は、田んぼが広がっていた。ホタルの季節には、カエルの合唱を聞きながら、ホタルを見て楽しんだ。祖母は
「ホタルの命は短いからね、取っちゃいけん、見物が一番、一番」と、言っていた。
実際、捕らえても、すぐに死んだし、何とも言いようのない臭みを持っていて、軽く手洗いしたぐらいでは、臭みは取れなかった。
鹿野周辺のホタル見物を堪能した夜のドライブは、本当に久し振りであった。ふっと“ホタル遊び”という言葉が、口をついて出た。ホタル遊びを計画して下さったF夫妻の心意気、その優しさを、何度も反芻(はんすう)しながらの、帰り道のドライブも、楽しかった。