コラム・エッセイ
No.16 オチのない話
ねえ、ちょっと聞いてよ! 予備校講師 長谷純子こんにちは。夏休みが始まりましたね。受験生には「夏は受験の天王山」と言われる重要な期間です。ここでの「天王山」は、1582年に京都府大山崎町にある「天王山」という山を先に占領した豊臣秀吉が山崎の戦で明智光秀を撃破し、天下統一に近づいたことから転じた、「勝負を決する大事な場面や時、勝負の分岐点」という意味です。つまり、受験生には夏にどれだけ勉強するかが合否に影響する大事な時、ということですね。受験生のみなさん、頑張ってくださいね。
さてさて。私のお仕事である予備校講師は基本的に生徒の評価が非常に重要です。このため、勤務先の予備校では講師の評価についてのアンケートを生徒に頻繁に取っています。例えば、10回程度の授業がある1学期には、授業の1回目と2回目、中間の5回目、あとは最終授業の計4回ほど取っています。
このアンケート用紙にはコメントを任意で書く欄があるのですが、中には結構面白いものもあれば、書かれた内容にショックを受けることもあります。過去には「顔が大きい。脚太い」とか夏期講習にノースリーブの服を着ていた時だと「二の腕、振袖状態」(⇐通じますか?)とか授業に関係ない、しかもショックな内容を書かれたこともあります。書いてあることは事実なのですが、それでも改めて他人から指摘されると辛いです。ちなみに、二の腕に対するコメント後はノースリーブの服で授業をするのを止めました。
アンケートのコメントは関西で仕事をしていた時にもあったのですが、その中で最も驚いたのが「先生の授業にはオチがない」というものでした。授業にオチっている? 漫才じゃないねんで! と読んだ瞬間は思ったのですが、他の仕事仲間に訊くと「関西では授業に限らず、いついかなる時にもオチはいる」と言われました。さすが吉本興業の本拠地がある関西です。
以前に神戸生まれ、神戸育ちの友人から、関西人は子どもの頃から友達と話している最中は常に「次、何言うて笑かしたろか」と考えていると聞いたことがあります。これはこの友人以外からも聞いたことがあるので、関西では普通なのかもしれません。だから、全ての話にオチをつけるのも関西ならでは、なのでしょうが、それにしても、授業のオチって何よ? といまだに分からないというのが私の本音です。
ですが、山口に帰ってきてすぐの頃に年上のアナウンサーの方と話す機会があったときのことです。私の過去の恋愛に関する経験談(ほぼ9割が失恋話です)を中心に話していた時に、この方から「長谷さんの話には全てオチがあるね」というコメントを頂いたのです。「おおっ!」と思いましたね。私、知らない間に関西ナイズされていたみたいです。
で、関西から周南市に住み始め、山口・九州で仕事をしだして最初に書かれたコメントは「話すスピードが速い」というものでした。関西人には違和感のない速さでも、場所が変われば速すぎたようで、以降は意識的に話すスピードを落としました。関西人は歩くスピードも日本一速いらしいです。だから、もしすると、関西人は何に関しても「いらち(せっかち)」なのかもしれませんね。
さてさて、こう書いてくると、この話にもオチを付けなければならないのでしょうが、周南市に住んでもう27年になるので、私はすっかり山口県人です。全てにオチをつける関西文化からすっかり抜けきっているはずなので、この話にはオチはつけないですよ。