コラム・エッセイ
No.16 夏の終わりに
ねえ、ちょっと聞いてよ! 予備校講師 長谷純子こんにちは。今年の夏は暑かったですね。エアコンをフル稼働させたせいで電気代の明細が怖くて見られない、実際に見るのを避けている長谷です。もっとも今年の暑さは長く続くらしいので、しばらく電気代の明細と仲良くなれそうもありません。
その暑い夏の終わりに思いがけない「出合い」がありました。以前にこの紙面で「釣れ釣れ談義」というエッセイを連載されていた伊藤氏と徳山駅近くにある魚屋と食事処「いかざき」にて大好きなお魚で一献傾けていた時のことです。
こちらのお魚料理はどれもお手頃な上に美味しいのですが、あまり量を熟せない私は吟味に吟味を重ねて多い時で3品、少ない時で2品しか食べられません。このため、どうしても失敗のない、馴染みの味のものを選びがちになります。日本酒は2合から3合を軽く飲んでしまうのですけどね。
ですが、この日は伊藤氏がお薦めの品を選んで下さったおかげで、初めての「出合い」があったのです。はじめましてのお料理は「鱧フライ」です。食材の鱧自体は湯引き、鱧しゃぶ、鱧の土瓶蒸しと様々な形で食べてきましたが、今までフライでは食べたことがなかったのです。お馴染みの鱧ですから、期待値はほぼゼロの状態で口に入れたのです。が、一嚙みしてもうびっくり! 衣のサクッとした軽い食感、ふわっとした柔らかさの中にある滋味深い鱧の味わい。
とにかく美味しい!興奮のあまり、思わず「ウーウー」唸りながら(口に食べ物が入っている時に口を開けてはいけませんね)、隣に座っていた伊藤氏の肩をバシバシ叩いていました。鱧がこんなに美味しいなんて!いえ、普通に美味しいのは知っていましたが、もう予想の範囲を超え過ぎていて。伊藤氏いわく「鱧は『鱧フライ』が一番美味しい」とのこと。納得です。
今まで知らなかったことが悔やまれます。ですが、「いかざき」の大将には「鱧はもう終わりだから、また、来年ね」と言われてしまいました。この時点で既に来年「周防はも」を食べる機会が増えることが決まりました。
で。この時、フライ→揚げ物→油、という連想から今年の夏期講習の小論文で扱った、食料自給率に関する問題の回で生徒とした雑談を思い出しました。日本の2023年のカロリーベースの食料自給率は38%です。先進国の中で最低水準です。平成30年のデータですが、諸外国ではカナダ266%、アメリカ132%、オーストラリア200%、フランス125%、ドイツ86%、イギリス65%です。ね、日本は突出して低いでしょう。
日本の食料自給率が低いのは消費の多い肉類と油脂類の自給率の低さと農業従事者の、高齢化と後継者不足による減少などが理由にあります。このため、耕作放棄地や休耕田も増加しています。そこで、植物油の原料となるアブラナやひまわりの花畑を作って花の間は観光地化、枯れたら種を取って油を搾って地域の特産品として商品化できたらいいね、と生徒と話していたのです。一面の真っ黄色はきっと綺麗だろうね、でもって、そこからできた油をちっちゃな瓶に入れて、限定品で売ったら一石二鳥だよね、と。
伊藤氏からは「実現は難しい」というコメントを頂きましたが、生徒と一緒に様々な問題についてあれこれ妄想しながら話す小論文の授業は楽しいです(あ、きちんと授業もしていますよ!)。
さて、夏の食べ物も「夏」期講習も終わりです。どれだけ暑さが続いても気象学的には9月からは秋です。この秋でもまた思いもかけない食べ物との「出合い」があると、仕事の励みになると期待しているのですが。どうでしょうかね。
