コラム・エッセイ
(64)ビワ(枇杷)の花
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
つい最近まで、ビワの花をじっくりと見たことがなかった。冬のこの時季にビワの木を覆う薄茶色のものがビワの花であることを知らないわけでもなかったが、特に興味を持つこともなかった。
ところが、偶然立ち寄った野菜の直売所でビワの花が切り花として売られていることを知った。売られていることも意外であったが、聞けば生け花として利用されているとのことであった。
虚を突かれた思いがした。古くから、縁起が悪いので庭にビワの木を植えるものではないと伝えられるなど、ビワの木に対する悪いイメージにとらわれ過ぎていたことに気づかされた。
これらの悪いイメージが迷信であることは明白であるが、迷信のすべてが間違いであるわけではないだろう。そこには必ず、伝えようとしている真意が隠されているはずである。
たとえば庭に植えると縁起が悪い、病人が出る、早死にするなどとされているのは、葉の大きなビワの木が育つことによって日当たりや風通しが悪くなり健康を損ねると警告していると思われる。
また同時に、ビワの木が広く根を張ることによって屋敷が傾いたり、倒壊する危険があることや衛生設備を壊すことで伝染病の発生や流行の原因となる可能性があることを知らせているのであろう。
それにも関わらず、どうしても庭に植えたいと思えるほどビワの木に薬草としての効果を期待してきたのも事実である。特に葉の部分は、煎じて飲むことによって咳止めや利尿剤として使われていた。
また、火であぶった葉を張ることで痛み止めとしたり、葉の上にお灸をのせたり、入湯用に使うなどその薬効は絶大である。そして、薄茶色の軟毛に包まれた白い花弁から漂ってくる甘い香りも捨てがたい。
