コラム・エッセイ
No.02 8月21日(金)②
〜ベトナム一人旅の記録〜 医療と福祉の国際協力の原点を求めてハノイ駅に刻まれた仏米ソ3国の歴史
ハノイ・ノイバイ国際空港が始発のリムジンバスの終点はハノイ駅。猛烈な大雨のため駅周辺の街歩きはあきらめ、駅の中で雨宿りを決め込む。
このハノイ駅の駅舎はベトナムの近代史を象徴する数奇な運命を経てきた。1902年のフランス植民地時代に建設されたルネッサンス洋式の駅だが、72年にベトナム戦争で米軍の空爆に遭って中央部が破壊された。その部分は戦争終結後、同盟国のソ連によって再建された。
つまりフランス、米国、ソ連という大国の思惑に振り回されたベトナムの歴史が、首都ハノイのこの駅舎に刻み込まれているのだ。
そのハノイ駅も歴史の転換期を迎えているようで、駅前では数年後に同駅に接続する都市交通ネットワーク「ハノイ・メトロ」の工事が進行中だった。技術はフランスや中国からの導入で、日本は関与していない。
首都の駅といっても東京駅のようなにぎやかさはなく、筆者の肌感覚では徳山駅の方が盛況。駅の中にコンビニやカフェがあり、しばしここで休憩する。
ベトナム寝台列車の最上級個室を予約
この日夜、ハノイ駅から寝台列車「SE19」に乗って中部のフエに向かう。出発3カ月前の5月、東南アジアのオンライン旅行予約サイト「Baolau」で予約、決済するとすぐにチケットがメールで送られてきた。
予約したのは最上級の個室「Lotus Train」の2人部屋。2人分の料金を支払えば部屋を一人で独占できる。最上級といっても食事と執事付きで1人約7千円。つまり約1万4千円で最高の一夜とワンルームを独占して楽しめることになる。
駅内に「VIP ROOM」なる部屋があった。筆者のチケットを見た女性駅員は「あなたは5万ドン(約300円)でこの部屋を使える」という。エアコンのきいたいい部屋だ。300円ですむなら、しばらくここにいることにしよう。
室内は建国の父のホー・チ・ミンの写真のほか、北朝鮮の最高指導者、金正恩氏の写真もあった。トランプ米大統領と2回目の会談をするために2019年2月にハノイに来た時のもののようだ。
駅員から中国人と間違われる
しばらくするとさっきとは違う女性駅員がスマートフォンの翻訳アプリの画面を筆者に見せにきたが、それは全文中国語。どうやら筆者は中国人と思われたらしい。英語で「私は日本人です」というと、彼女は急いで日本語表示に切り替えた。
そこには「あなたが乗る寝台列車の改札口には2階です」と書いてあった。2階に移動したが、ここはまさにソ連が再建した駅舎の部分で、54年前は米軍の空襲の標的だったところだ。平和な時代に自由に旅行ができるありがたさは何物にも代えられない。
ここから渡り廊下を渡って寝台列車の待つホームに向かうが、ホームに昇降するエスカレーターやエレベーターはない。重いスーツケースを持って急な階段を降りるしかない。
階段を降りると寝台列車SE19の前で男性車掌が笑顔で待っていた。筆者は生まれて初めて、外国の寝台列車に足を踏み入れた。
ハノイ駅の外観(中央がソ連製、左右がフランス製)
ハノイ駅のロビーでくつろぐ一般客
