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【光市・下松市】冨士高圧、イノウエが出展 国際水素・燃料電池展で技術披露 カーボンニュートラル社会へ貢献
経済その他9月13日から15日まで千葉市美浜区の幕張メッセで開かれた第20回国際水素・燃料電池展に、周南地域から光市と下松市の2社が出展した。この展示会はカーボンニュートラル社会の実現に向けて、水素や燃料電池の研究開発をはじめ、製造に必要な多彩な技術、部品、材料、装置、燃料電池に関する世界中の企業が集うもので、両社の高い技術が世界にどう羽ばたくか、今後の成長が期待されそうだ。 (山上達也)
冨士高圧は大口径水素用配管、イノウエは極低温や宇宙用途素材
出展したのは、光市島田のトータル配管メーカー、冨士高圧フレキシブルホース㈱(藤井康司社長)▽下松市古川町に下松営業所を置くステンレスや高機能合金を扱う商社、㈱イノウエ(井上浩樹社長、本社・東京都千代田区)。冨士高圧は大口径の水素用配管の溶接や曲げ加工▽イノウエは極低温用途や宇宙用途の断熱材「スーパーインシュレーション」を紹介、説明した。
冨士高圧 世界初の多層盛溶接や高度な「曲げ」技術
冨士高圧は日本製鉄㈱製の超高圧水素用ステンレス鋼を冨士高圧が開発した世界初の「多層盛溶接法」で接合したり、管の太さの均一さを維持したまま90度に曲げる高い技術を披露した。とくに「曲げ」技術は継ぎ手とその溶接が不要になるため、より安全性が高まる利点がある。
日本製鉄㈱製のこの製品は、既存ステンレス鋼の中でも最も高い品質を誇っている。冨士高圧の多層盛溶接法は高圧ガス保安協会の認定を受け、接合や曲げの正確さは水素を負荷なく送ることに貢献しており、市場拡大が期待される。
冨士高圧の仲原知己技術部長(55)は「配管は製造現場の血管。高度な安全性と耐久性を求めて研究を重ねた」と話し、営業部の小川直之課長(46)や松久真司さん(39)も「現場で働くみんなが研究スタッフ。知恵を出し合って技術を開発してきた」という。
会場ではドイツやポーランドなど海外のバイヤーからの引き合いもあり、これを機に世界を相手に営業攻勢を強めていく構えだ。
イノウエ マイナス253度の真空多層断熱材
イノウエはステンレスをはじめ高合金、チタン、アルミニウム、銅などを扱い、日立製作所との関係が深い。営業所も下松市や茨城県日立市など日立製作所の事業所の所在地にある。
水素は燃焼時に二酸化炭素を排出しないため、カーボンニュートラル社会への貢献を目指して発電用のエネルギーや燃料電池車の需要が見込まれる。大量な輸送や貯蔵が可能なようにマイナス253度以下で液化させて体積を減少させている。
液化させた水素をマイナス253度以下に保つために使われるのが真空多層断熱材の「スーパーインシュレーション」。特殊で高品質な断熱保冷材をタンクやパイプの外に巻くことで確実な効果を発揮している。
ほかに超電導機器、超電導送電ケーブル、極低温容器用途にも使用でき、人工衛星や宇宙船を輻射熱から保護する断熱性能がある。
イノウエはこの断熱材の日本の総代理店。下松営業所の岡本弘基さん(27)は「会場では材料調達から加工までの事業内容を説明できた。引き合いもあり、今後の事業展開に見通しを持つことができた」と話していた。
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県内からは2社のほか、柳井市の㈱テクノウェル▽宇部市の新光産業㈱が出展した。