ニュース
政治 : その他のニュース
周南3市 市議会議長座談会
政治その他笠戸湾の前で左から木村議長、金藤議長、長嶺議長
長嶺 周南市議長「高大生とコミュニケーションを」
金藤 下松市議長「新道建設へ3市タッグを組んで」
木村 光市議長「自主努力重ねて議会改革を推進」
周南3市の将来はどうあるべきか―㈱新周南新聞社は周南市、下松市、光市の各市議会議長が意見を交わす座談会を7月25日に下松市の国民宿舎大城で開き、周南地域全体の発展について大いに語り合ってもらった。
座談会は本紙の主催で、2018年に下松市の国民宿舎大城▽20年に光市のホテル松原屋▽21年に周南市の遠石会館で開き、昨年はコロナ禍のため中止した。今回が4回目の開催になった。
(聞き手・中島進㈱新周南新聞社社長)
「高校生議会」「議会報告会」「議会モニター」
中島 本日はお忙しいところをありがとうございます。まずは議会の特徴や「うちではこんなことをしていますよ」のようなところからご披露いただければと思います。
長嶺 周南市は今年が合併20年の節目の年です。大きなポテンシャルを持っている街ですので、議会も行政をしっかり応援したいと思っています。
金藤 議会は市民に寄り添うことが基本姿勢で、市民の前には執行部側とか与党とか野党はないんですね。市民が住んでよかったと思える街にするのが議会の役割です。
下松市は合併せずに単独市制を選択しました。20年前の周南合併論議で私は合併推進派でしたが、市民が合併をしない方向を選んだ以上、それを尊重し、市民の幸せに通じているのかを検証しなければなりません。
さらに下松市議会では「高校生議会」も開いています。市内の高校3校には市外から通う生徒もいますが、いろんな意見を戦わせてくれています。主権者教育として中学生の傍聴も呼びかけています。
木村 光市議会では議会基本条例をもとに「高校生議会」や「議会報告会」を開き「モニター制度」を設けて市民の声をお聞かせいただいています。委員会室のネット中継にも取り組んでいます。
政治倫理条例もありますが、ハラスメント問題が起きても抑止力として働かず、頭の痛いところです。私が所信表明で申し上げました「戮力協心(りくりょくきょうしん)」のごとく、全議員が一致団結できる議会にしていきたいと思っています。
中島 下松市や光市の「高校生議会」は本紙もしっかり取材してきましたが、周南市議会は高校生議会は開催されていませんか。
長嶺 高校生議会は開いていませんが、小学生対象の子ども議会は開いています。
中島 光市議会のモニター制度とはどんな内容ですか。
木村 一般市民から議会モニターを募集して、本会議や委員会を傍聴していただき、率直なご意見をいただくものです。モニター制度を導入して5年、ピーク時は18人いたモニターも応募される方が減り、今年度は3人です。モニター制度のあり方も再検討が必要かと考えています。
中島 周南市議会は若者に関心を持ってもらう取り組みや仕掛けは、お考えですか。
長嶺 ただちにそうした取り組みは持ち合わせていませんが、高校生や周南公立大の学生とコミュニケーションがとれる場があればと考えています。
若者の政治離れを食い止めるには?
中島 光市や下松市は周南公立大との連携に熱心ですが、周南公立大に対する期待は大きいのでしょうか。
木村 かつて光市議会のモニターに(旧徳山大の)学生さんが参加されていました。今後もモニターに応募していただき、将来は議員を目指してほしいと期待しています。
金藤 下松市も周公大と連携する方向性は持っていますし、徳山高専には下松スポーツ公園の展望台の設計を提案していただきました。産学共同のまちづくりを進めています。
中島 若い人の投票率低下は深刻です。19歳の投票率は1割にも満ちません。どうしたら政治に関心を持ってもらえるでしょうか。
長嶺 私の地元は鹿野ですが、県立大や都市部の私立大のゼミの関係の学生がどんどん入っている地域があります。学生を受け入れる中山間地域も頑張らないといけません。先生方のネットワークの相互作用も大きいものがあります。
中島 湯野温泉を周公大の先生が分析して高い評価を発表すると、全国に情報が広がりました。その中に学生が参加することで、地域に興味を持つことにつながると思います。率先してそういう取り組みを仕掛けていくことが、若者の政治離れを食い止めていくのではないかと思います。
防災も3市で力を合わせて
中島 3市の防災の現状はいかがですか。周南市熊毛地域の消防は光地区消防組合が担当していますが、そのあたり、周南市議会はいかがでしょうか。
長嶺 市民の安全と安心を守ることが機能していれば問題ないと思います。何か問題があれば是正すべきだと思いますが、当面の問題はないと思います。
中島 熊毛地域の消防業務に関する情報は周南市に確実に伝わっていますか。違和感はありませんか。
長嶺 たまにそのことを発言される議員はおられますが、もし行政の壁があって伝わらない実態があり、それが不都合であるなら、是正しなければならないと思います
中島 かつて周南市が島津幸男市長の時代に3市の消防を統合しようと話がまとまっていましたが、市長の交代を機に構想が消えてしまいましたね。
金藤 当時は県全体で広域消防という考え方がありましたが、その後は進まなかったと聞いています。私も3市の防災の壁は感じていません。かつて下松市米川の火災に周南市須々万から消火活動に来ていただき、周南市久米の火災では下松市から火を消し止めたこともありました。市を越えた連携はとれていると考えます。
木村 光地区消防組合は光市と周南市と田布施町の一部事務組合で、2市1町の議員がこの組合の議会に集まります。議会の議長は周南市長で、私は副議長です。市川熙光市長は組合の管理者です。2市1町で情報交換もできていますし、市や町の壁はありません。私はこういったことがもっと広がってもいいと思っています。
中島 これからの時代、どんな災害がどこで起こるかわかりません。情報共有は大切になってきます。これからは3市で力を合わせられるような方向に議会を中心に動いていただければと思います。
「待機児童受け入れ」「子育て先進地」
中島 3市の連携ではもう一つ、働く人たちの問題があります。待機児童の問題はいかがでしょうか。
木村 光市は下松市から待機児童を定員の範囲内で受け入れています。
長嶺 子育て分野では周南市は常に先進地だと担当は思っておりまして、政府の制度に先んじて「こども局」を設けたり、お父さんの相談窓口もあって充実している自負を持っています。保育士さんの数などいろんな課題はありますが、3市で共通意識を持って子どもたちを育てていこうという認識が大切です。
中島 市民の生活感は3市の壁を超えています。市民が壁や不便を感じないように、議会としても支援してほしいと思います。ところで人口増が続いてきた下松市は、最近はいかがですか。
金藤 増え続けていた下松市の人口も5万7千人を割り込みました。今後どうまちづくりを進めて人口減少に歯止めをかけるか、大きなテーマです。雇用の創出も大切です、
行政は企業頼みではない振興策を
中島 周南市も毎年千人ずつ人口が減っていますが、長嶺議長さんの地元の鹿野も含めて、周南市として人口減少対策の手立てはありますか。
長嶺 具体的な手立てがあれば、もう既に実行しているだろうと思うんです。周南市は大きなポテンシャルを持っていますので、駅前再開発や脱炭素に向けた企業の新しい取り組みにも大きな期待を持っていますし、そこから人口減少防止の手がかりが見えてくると思います。
木村 光市も人口の自然減は仕方ないにしても、社会減をどう抑えていくか。特色のある街づくりが必要だと思っています。
中島 岡山県のある自治体が出生率を1・90まで伸ばした事例もありますね。3市でもやろうと思えば、まだまだできることはありませんか。
金藤 下松市では日立ハイテクが半導体製造装置の生産設備の建設のために約240億円を投資するなど新しい動きがあります。これに行政がどんな仕掛けをするか。豊井地区のまちづくりでも上下水道局は素晴らしい整備の試案を作っています。企業頼みではない振興策が行政に求められていると感じます。
中島 道路の新設などインフラ整備が行政にとって基本中の基本ですが、下松市はその取り組みが突出していましたね。道一つで街が変わります。
木村 光市は県との交流事業で企業団地の造成に着手しました。これを機に人口定住と交流を図ろうと、道路整備やインフラ整備に期待しています。
金藤 3市に共通して求められているのは3市を貫く新しい道路の建設です。高潮や台風時のことを考えればこの道路は絶対に必要ですし、人の流れが活発になるでしょう。3市でタッグを組んで将来的に安定した道路を作ろうと話しています。
議会が地域と県を動かすパワーを
中島 周南道路の構想は、なかなか進みませんね。行政の壁の厚さを感じます。
長嶺 そうですね。それにもまして県東部に県の施設は少ないと感じます。徳山ポートビルが、あの程度のお茶を濁す形で終わってしまいました。もう残念の極みでした。
中島 平成の大合併を県内で一番に実現したのに、県から何の恩恵もないですね。税収は結構あるはずなんですが。この冷たさは何が原因なんでしょうか。
金藤 政治力でしょうか。私はそう分析しますね。
中島 議会が地域を動かし、県をも動かすぐらいのパワーをぜひ持っていただきたいとお願いしたいです。
最後に一言、今後の抱負をお願いします。
木村 光市議会はさまざまなことに取り組んでいますが、議会改革もまだ最中だと感じています。そんな中で我々がどれだけ自主努力ができるか。それに尽きるのかなと。議会の魅力を発信できるような議会にしていきたいと思います。
金藤 下松市議会は市民に一番近い存在でなくてはならないという考えから「議会報告会」や「高校生議会」を開いてきました。市民の声を受け止めて議会に反映させていくことが基本です。議員一人一人がなぜ議員になったのかを自覚し、日常的な活動をしていくことが有権者の投票率向上につながるでしょうし、関心持っていただけるような活動を展開していきたいです。
長嶺 市民から「この人に議員を任せてよかった」と言っていただける信頼感を議員一人一人が持つことが大切だろうと思います。3市それぞれいいものを持っていますし、何よりも港を共有している3市ですので、もっと力を合わせて盛り上げていきたいです。
中島 これを機会に3市で合同議会を開くとか、公式ではなくてもいいので3市の議員が一堂に集う機会があればいいですね。3市の議員が仲良くなり、手を携えて、面白い地域ができたらいいなと夢を見ています。きょうは皆さん、ありがとうございました。

長嶺敏昭さん
周南市議会議長
長嶺敏昭(ながみねとしあき)さん(68)
1955年生まれ。
徳山高、中央大経済学部卒。
鹿野町商工会青年部長、鹿野町議1期を経て周南市議6期。
元・長嶺木材産業㈲社長。
周南市鹿野下。

金藤哲夫さん
下松市議会議長
金藤哲夫(こんどうてつお)さん(76)
1946年生まれ。
下松工高卒。
東洋鋼鈑㈱社員を経て下松市議7期。
保護司、花岡公民館運営協議会長、降松星太鼓保存会事務局長。
下松市生野屋。

木村信秀
光市議会議長
木村信秀(きむらのぶひで)さん(61)
1962年生まれ。
萩高卒、明星大人文学部中退。
松岡満寿男衆院議員秘書を経て光市議5期。
㈱YMCインフォメーション社長。
光市島田。
盛り上がる座談会
座談会を終えて
3市を持ち回りで開いている3市議長座談会は、2年ぶりの開催で4回目になりました。
座談会では3議長とも市民に開かれた議会づくりに熱い意欲を示しました。3市を貫く新道の建設に意欲的な半面、県の恩恵が周南地域に少ないことへの苦言もありました。
民意の象徴である各市議会の議長が、経済的にも密接な3市の将来を共に展望することは大変意義があり、今後も座談会を続ける意義を感じました。
座談会の録音テープは、初めて「AI音声自動テキスト化文字サービス」で文字起こしをしました。1時間の文字起こしだと手作業なら2時間以上かかるところ、これだとわずか1分でした。
もちろん機械的な翻訳のため、最終的には人間がチェックする必要があります。「社会」が「射界」だったり「何かこう…」が「軟膏」になっていたりと「珍訳」もありました。
ともあれ読者の皆さんも、この座談会を通じて地域の課題や議会活動に、さらに関心を持っていただくことになれば幸いです。
(報道部次長・山上達也)