コラム「一言進言」
生きものとの共存はできるか?
〜知恵比べに勝とう!〜
□10年以上前だが、ベトナムで犬料理の店に行った。川のそばで、店の下から犬の泣き声が聞こえる。出された犬の肉に、連れの仲間たちは手を出すことができなかった。辺りは犬料理の店が軒を連ねていた。興味本位で入ったが、後味の悪い経験になった。韓国でもそうだが、犬の肉を食べる国は世界にはある。一方、ネパールでは牛が道路の真ん中を歩いている。牛肉を食べるなどもってのほかで、車の事故で牛を殺すと人間のそれと同じ罪を背負う。
□今度は牛の肉を食べる人たちが、鯨には異常な愛情を注ぐ。捕鯨船を襲い、体当たりまでしてくる。動物を愛護する心情は難解だ。野犬対策で、捕獲作戦を実施しようとすると、愛護団体系の人が激しく抗議に訪れる。エサをやらないでと看板を建て、チラシをまくが、効果は限定的だ。犬好きな人はどうやっても好きだ。大人が数10人参加して捕獲作戦をしても、2日間でわずか4匹しかつかまらない。
□本気に捕獲する気なら、少々お金を払っても犬取り名人に頼むしかないのではないか。保護と捕獲はニュアンスが違う。殺処分をしないと宣言して、プロの保護作戦と称して実行すれば少しは抵抗感が薄らぐかもしれない。いずれにしても、このままだと、いつか子どもが襲われる事態が起きるかもしれない。先日、飼い犬のレトリバーが乳児をかんで殺した。犬は基本、獣なのだと思い知った。
□何をしても反対する人は出てくる。知恵比べだ。「しゅうニャン市」と言えば言うほど野良犬対策への苦情が増える。悩ましい現実だ。
□中山間地区では猿の被害の苦情が多い。根こそぎ畑を荒らされて農業をやめた人もいる。猟友会に懸賞金を付けて猿退治を図ったが、思うようにいかない。撃ち殺された猿を、仲間の猿たちが飛んできて囲み、涙を流す仕草をするらしい。一度その光景を見ると、さらに撃つ気にはなれない、と猟友会の人は語っていた。
□生き物との共存は実に難しい。熊の出没も多くなった。元はと言えば人間が作り出した光景だ。開発し、追い出した。平気で捨てていったのも人間だ。多少の代価を払っても、共存の道を探らざるを得ない。動物愛護団体の行動も過激になる一方だ。抗議の仕方も尋常ではない。被害を受ける市民の感情もある。行政は、ここが知恵の出しどころだ。猿知恵に勝つ、人間の知恵のすごさを見せつけろ。いや、今はAI(人工知能)の時代か。いっそ、AIに考えさせるか。
(中島 進)