コラム「一言進言」
復旧工事を見直せ
〜大震災を思い出す〜
■8年前のあの日、私は周南市議会での百条委員会を傍聴していた。何やら記者たちがざわつき始め、あの大震災を知った。急いで車に戻り、テレビで津波の惨事をずっと見ていた。車がまるでおもちゃのように流され、屋根の上で助けを求めている人が、一瞬のうちに見えなくなった。
■いまだに5万人をはるかに超える人たちが避難生活している。3月11日になると、新聞もテレビも、家族を失った人たちの悲しみと、乗り越えようと必死で生きているさまを描く。先日ある集まりで、元KRYアナウンサーの岡本修二さんが講演して、「風の電話」の話をしていた。あらためて感動した。大槌町の高台の家の庭に設置した、電話線もない公衆電話ボックスだ。
■持ち主が身内の不幸から思い立って庭に作ったものだが、震災後、3万人を超える人が訪れたという。黒電話が一つポツンと置いてあるだけだが、受話器を手にした人たちは、亡くなった子供や、親に話しかける。線はつながっていないが心はつながる、とても素敵な電話だ。
■最近の災害は、想像を超えたものが多い。広島、岡山、そして周南地区でも3市に多くの被害が出た。とりわけ周南市では犠牲者まで出た。年明けのニュースで遺族の片づけがようやく始まったとあった。がれきの中から父親の遺品を探している姿は、切なかった。復旧工事の遅れは深刻だ。工事関係者に聞くとさらに深刻だ。
■災害発生時、地元の業者は生活道確保のため、発注されないでも手助けに向かう。そして時間が経過、本格復旧工事では、公平さを一番大切にする行政は、場所なんか関係なく入札業者を決める。わずかな金額の差で、須金の工事を、大手を含めた一度も現地を見たこともない業者が落札する。不調や辞退が続出するはずだ。地元業者を優先すべきだ。まさかの時に助けてくれることが肝要だ。
■合併して、入札管理もややこしくなった。しかし、これだけ復旧工事が遅れると、その間に集中豪雨に襲われることも想定される。機械的な発注ならパソコンでできる。知恵と、地域を考えた施策が求められている。これからはもっとひどい災害になるだろう。
■対策本部も作れなかった体質を変えるには、どうしたら良いのだろうか。防災無線では救えないのは実証済だ。聞こえないのだ。民の声も聞こえないか。「風の電話」は聞こえなくても良いのだ。心の声だから。
(中島 進)
