2024年12月11日(水)

コラム「一言進言」

故郷は周南地域と高校生? 市境を意識するのは大人だけ

〜箱モノだけ自慢の合併20周年?〜

「合併は目的でなく手段だ」20年前平成の大合併の掛け声の中でよく使われたフレーズだった。衰退する地方を何とか合理化をすることなどで、踏みとどまらせようと全国で展開された。実際合併した自治体は思惑通り、衰退を食い止めてこれたのだろうか。

周南市の合併が実質論議されたのは2002年の6月からだった。当初3市4町の合併構想から始まり、光市などを除く3市2町の先行合併協議が始まったが、下松市が協議の席から退席して、結局2市2町の合併協議会が始まった。熊毛町では反対派の町議らが反対の町民投票などもして、下松市に合併申し入れするなど混乱した。

「日刊新周南」はその騒動の17年前の1985年に周南4市3町を網羅するローカル紙として創刊した。「周南は一つだ」と趣意書に記した。人の往来、経済の結びつきなどこの周南地域がもっと連携して、相互互換で地域全体が衰退から抜け出そうと呼びかけた。そのため情報共有することで補えることは数多くあると見込んだからだ。

住民の想いもいろいろあった。青年会議所は2002年のこの時期、下松と徳山が先に合体、周南青年会議所となった。若者たちの想いはなかなか年配の人たちには浸透せず、結局今の形になった。果たしてその後はどうなっただろうか。独立独歩を歩み始めた下松市は、市街地に次々と道を通し、商業施設もどんどん集約して、人口減少する2市を圧倒していった。

その後も周南市は毎年1千人、光市は500人近い人口減が続いている。その原因はいろいろあるが、一つは下松市のようなインフラ整備が手つかずだったからだ。周南市の久米の道路開通は、計画より20年も遅れた。久米地区は道路が通っただけで子どもも人口も増えた。

しかし、下松市だけが生き残ることはない。3市は多かれ少なかれ運命共同体であることは間違いない。周南市の熊毛地区は光地区消防本部の管轄のままで、災害時は光市から駆け付ける。下松市と周南市の消防の一体化は、ほぼできるかと思いきや話は流れ、隣接地区の災害に不安が残ったままだ。

周南3市が力を合わせ、県や国への要望ももっと深い議論が必要だ。周南地域に欠けているものは何か、どんな施策が必要か、3市市長は定期的に話し合いをしているのだろうか。昨年の光市長選で藤井周南市長の後援者が対抗馬を応援、どう見てもぎくしゃくした関係が残ってしまった。

合併騒動時の議論をもう一度思い返す必要がありそうだ。高校は広域になり、どこの高校でも地域の課題を話し合うと、特定の市のテーマでは無理だ。来春の甲子園に光高校出場が濃厚になった。ちなみに出場選手の出身中学は周南市の岐陽中学から4人、末武や下松から4人、秋月中学もいる。周南3市合同チームの様相だ。出場報告には3市の市長すべてに訪れるのだろうか。

高校生たちにとっての故郷は、周南地域になった。市境を意識しているのは、大人たちだけになりつつある。とりわけ市長はじめ行政機関だけが未だに市境を強烈に意識しているのではないか。観光も周南地域としての観光の視点が必要だ。冠山も、笠戸も湯野も共に我が故郷の観光地の意識になれば、取り組み方も違ってくるだろう。

19年前、4商工会議所も合併の話が出ていた。先ずは商工会議所から一緒になろうとの声も出て、議論もしていた。今では嘘のような話だ。新南陽と徳山は同じ市でも別々だ。大人たちの感覚が高校生たちに追い付いていない。3市の広報に毎回一つぐらいは広域版の話題が載っても良い時代だ。

合併20周年を迎えて、各市はどんな総括をするのか楽しみだ。特に周南市はどこの部署が担当するのか、20年で人口が激減したが、その原因はそっちのけでまとめるに違いない。箱モノが自慢の20周年だけにはさせたくない。 

(中島 

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