コラム・エッセイ

　安芸高田の石丸前市長には従前よりあきれかえっていた。都知事選後に「今回の実質的な勝利者は石丸だ」という物知り顔の解説を聞いてイラだっていたが、その後の“石丸構文”によって化けの皮がはげて溜飲を下げている。そこで石丸考を3点。

　㊀彼は「僕はコミュニュケーションの基本としてミラーリングする。善意は善意で返すし敵意は敵意で返す」とそれらしい発言をしているが、実態は会話がかみ合わない、言葉尻をとらえて反論する、自分優位の構図づくりに腐心する、ヘドがでる。

　そのようなスタンスにより市民は2つの将来価値を失った。ひとつは公募で選んだ副市長の選任に関して、いまひとつは無印良品の出店に関して…両案とも市長の独りよがりが要因で対立した議会に否決された。彼には「相手も勝たせて自分も勝った方が自分が手に入れる成果は大きい」とする我々商売人的感覚はない。私でも注目したこの2案をつぶしたのは議会の無知でなく彼の独りよがりであると断言したい。この4年間、彼の個性が要因で遺失したものはどのくらいあるであろうか。彼の手法は無用な対立と分断を招いた。

　㊁ふたつは彼が誘った、彼の周りに集まった、彼が教育しようとした仲間…議員や役所の職員や市民若者達を裏切ったこと。2期目の今からというときに一人脱藩するとは。7月実施の後継市長選挙では石丸直系候補は敗北した。梯子をはずされた彼らが哀れでならない。彼一人は政治コメンテーターとして新しいステージを獲得したかもしれないが。
　　
　㊂それでは彼のこの4年間の実績に関し乏しい資料から推測する。
　まず認識すべきはA表、当市が全国ワースト46位の財政破綻にあること。「恥を知れ」との恫喝発言は居眠り議員に対してではなく、この状況を見過ごしてきた役所や議会に向けられたものであったような気がする。一方、B表のとおり人口減少がとまらないが、同じ消滅可能自治体、県内の萩、長門、美祢の3市平均よりさらに劣る指数も多い。行き詰っていると思える。

　C表では石丸市長の就任以降22～24年が実績評価の対象になろうが、おおむね横ばい傾向のなかで㋭の地方債（＝借金）の減と㋬のインフラ使用料金の値上げが目につく。24年度の予算編成方針には『今後公共施設の削減を進めることができなければ市の財政運営は立ちゆかなくなる。持続可能な財政運営のためには、公共施設やインフラの適正配置、受益者負担の適正化、市のコンパクト化など人口減少時代に応じた行財政改革が急務である』としていて、㋭や㋬はその対応の成果といえるのかもしれない。彼は財政再建という課題に彼しかできない周囲に配慮しない強引な手法で真正面から取り組んだのであろう。ここまでなりふり構わぬ市民への訴えは、他市にに例が少ないのではなかろうか。

　惜しい。彼の独りよがりの手法がどれだけ通用するのかもう一期みたい気もしてくる。ひと昔、先輩から教えていただいたチャンドラーの至言『強くなければ生きられない、やさしくなければ生きる資格がない』を贈りたい気持ちにもなってきた。

…がどうでしょうか。

講演請負業 阿武一治 kazuharu.anno@gmail.com