2026年05月02日(土)

コラム・エッセイ

そのコメントに異議あり

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 芸能人で教育者、社会活動家の顔も持つI容疑者が大麻所持の疑いで逮捕されたことについて様々な議論が起こっている。もちろん大部分は違法行為を咎める立場からのものだが、容疑者が比較的高い社会的評価を受けていたことと、以前から大麻について語られていた、習慣性が低い、医療に利用されることもある、外国では合法化されている例もある、等の理由で違法性自身を否定して容疑者を擁護し、日本でも所持・使用を合法化すべきだという意見も多くなっているようだ。

 更に、あるワイドショーではコメンテイターの一人は「I容疑者の場合、誰にも迷惑をかけていないのだから逮捕する必要はないのではないか」とコメントしていた。これを聞いて、少しでも常識・良識のある者なら、それはおかしいと思うだろう。それはたとえて言えば「彼は運転のプロだから、時速200キロで車を走らせても大丈夫。現に事故も起こっていないのだから、検挙しなくてもいいだろう」あるいは「カンニングをしたからと言って、それで誰かが困るわけではないのだから、いいじゃないか」と言うようなものだ。

 人の行為を禁じる法律は個人別、事例毎に定められているのではない。不特定の人がその行為をすることが個人にとっても社会にとっても危険な結果になる恐れが大きいと考えられることをしてはいけないと、国民の合意のもとに定められているもので、それを知りながら「この人は例外、適用外」と主張できるものではなく、擁護できるものでもない。

 医療目的に使うこともあるのだからと言う言い分も、代表的麻薬であるモルヒネは末期癌患者の激痛を和らげるため、医師の管理下に合法的に使用されているし、覚醒剤である向精神薬が同様に治療薬としてうつ病、精神疾患の治療に処方されていることからも、正当化はできないことだ。

 要するにI容疑者は自分の行為は社会的に禁じられていて罰せられるものであることを知りながら行っていたというのだから、それが事実であるならば、擁護の余地はない。彼は自分がしたいことを、してはいけないことと知りながらしたということで、こういう人が教育界で指導的立場に立ったり、広く一般に伝わる形で自分の意見を述べ、多くの人に影響を与えることは罪深いことだ。

 彼の様々な社会的活動を評価して、1つの行為でその人への評価を全て否定することはないという意見も出るだろうが、彼が自分の行為を恥じ、反省し、罪に服するのでなければ、泥棒が周囲に「泥棒してはいけないよ」と言うのにも似て、言うことは正しく良いことでも、説得力はなく、言った人の評価にもならないということだ。

(カナダ友好協会代表)

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