コラム・エッセイ
ダブルチェック
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子とうとう全都道府県にわたる緊急事態宣言が出て、我が身に迫るコロナに怯える日々を過ごしているが、そうは言っても日々の生活の糧を購うためには最低限の外出もしなければならない。そんな中、乏しくなった食材を買い込みに近くのスーパーに出かけたときのこと、ちょっと面白い光景を目にした。
買い物を終えてレジに並ぶと一人先客がいて、レジの女性がバーコードを通して代金を積算している。もうそろそろ終りだなと、かごを持ち直してレジ台に置いたとき、出来事は始まった。レジの表示が出て「××円です」と告げられた瞬間、あまり若くはないが、年配というのは失礼に感じるほどの先客の女性は、突如レジかごの商品を一つ一つ手に取り、自分のバッグから電卓を取り出すと、価格シールを見ながら打ち込み始めた。
どうやらレジの計算結果と自分の予想していた額とが違っていたらしく、レシートに印字された数字を商品のラベルの数字と一つ一つ照らし合わせ、その度にレジの女性に確認しているのだ。いわゆるダブルチェックだ。
人は誤る動物である(いや、コンピューターだって時には間違った結果を出すことがある)だから、人の手を経て行われる作業には間違いが起こる危険は常につきまとう。森友文書の改ざんなどの意図的なものは論外だが、勘違い、思い違い、考え間違い、書き間違い、見間違い、計算間違い、写し間違い等々、後から見ると「なぜこんなことになったのだろう」という結果を起こす原因は様々にある。生徒達にも常々「イージーミスさえしなければ100点取るのは簡単なことよ」と言い聞かせている。
間違いが「またやったか!」と笑って済ませるものなら害はないのだが、取り返しのつかないことになる場合は絶対に防がなければならないから、作業は一人でなく複数でやる「ダブルチェック」が必要になる。今携わっている若者支援の事業では各種の記録は、個人情報に関わる秘密事項満載だから、特に文書を送るときには内容・宛先・住所を必ず複数でチェックする。「大事な作業はダブルチェック」はどこにも当てはまる原則だから、今、目の前のレジで起こっている光景も理解出来る。
この女性の行動は、後に待っている客にはかなり迷惑だが、間違ってはいない。支払いを済ませた後で悶着を起こすよりも、その場で双方で確認し、どちらかが間違っていたと納得する方が理に適っている。今の日本に蔓延しているおかしな政治も、この女性のように、厳しくダブルチェックする人が増えれば、少しはまともな姿になるだろうに。
(カナダ友好協会代表)
