コラム・エッセイ
奇跡の復活
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子今日から3月。緊急事態宣言で始まり、その後も翻弄され続けた新型コロナウィルス禍がまだまだ収まりそうにないうちに年度末となった令和2年度が締めの季節を迎えた。オリンピック組織委員会会長交代のドタバタ劇の幕引き、テニスの全豪オープン大坂なおみ選手の優勝と続く中で、合格発表、卒業と、一年の総決算の行事を経て、新年度に移って行く。
そんな中で我が家では思いがけないことが起こった。昨年末、突如動きを止めた太陽光発電機。雨の日も風の日も、雪にも夏の暑さにもほったらかしにされ、それでも、欲もなく、怒りもせず、黙々と発電し続けて16年だったが、遂に力尽きたか、モニターに空しく「0」が続く時を迎えた。
保証期間はとっくに過ぎ、メーカーのサービスセンターに恐る恐る依頼した修理見積額は、電力会社への売電料では10年経っても回収できないもので、長年の健気なお勤めに忍び難きを忍ぶ思いで、年末断捨離を決行した。と言っても配線の連結を外し、ブレーカーを落としただけなのだが、文字通り「縁が切れた」状態で年を越すことになった。
小なりとはいえ、法的には発電所として扱われている太陽光発電装置、運転停止となると電力会社や国にそれに関わる手続きをとらなければならない。とはいえ、この程度の供給減が日本のエネルギー事情に影響を与えるとは思われないから急ぐことはないと、新しい年を迎えて先月初め、諸手続のご指南を仰ぐため、設置の時お世話になった業者さんを訪問した。
長年何かとお世話になった担当のMさんに事情を説明し、国のエネルギー行政のいい加減さ、電力売り渡し価格の横暴極まりない大幅切り下げ、製品品質の長期保証がやはり困難なメーカーの技術力などへの不平不満を盛り込みながら、発電停止の手続きの指導を受けた。
20年は運転しなければ元は取れなかったと、際限なく続く愚痴話を「ふん、ふん」と聞きながら一通りの手続きの説明を終えたMさんの口から、意外な提案が飛び出した。発電機の部品修理費は、新品に換えるとなると確かに高い。だが、保証のつかない中古品なら安く済ませることはできる。丁度うちに在庫があるから、それでよければ検討されてはという提案。頭の中での簡単な割り算のあと、とても魅力的な価格に即断で応じ、部品取り替えを依頼した。
重い部品を取り替え、配線をつなぎ直し、ブレーカーを戻して発電再開を告げるモニター表示に、これでまた晴れの日の喜びが二倍になる気持ちを味わえるとうれしくなった。奇跡の復活。16年前、頸椎損傷の全身痲痺から復活した我がつれ合いの姿が重なった。(カナダ友好協会代表)
