2026年05月02日(土)

コラム・エッセイ

「自助・共助・公助」に思う

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 「自助・共助・公助」日本国首相が好んで口にする言葉だ。叩き上げの苦労人と自称するこの方にとって、個人への社会的支援の関わり方を考える基準になっているのだろう。支援にこのような区分があることに問題はない。問題は、この方はこれが支援の順番だと思っておられるように感じられることだ。 

 何か困難な状況になったとき、先ず自助の努力が求められ、解決できず立ちゆかなくなったときには周囲に助けを求める。それでもどうにもならなくなって初めて公的支援にすがるのが当たり前の道筋だという考えは、この方に限らず、かなり広く深く浸透している。

 例えば生活保護費の受給。最近では若い世代には余り抵抗感がなくなったようだが、私自身を含めてある程度の年代以上の世代にとっては、相当に抵抗感が強く、たとえ生活保護支給額を下回る収入しかなくても、支給申請はしたくないという思いが強い。

 支援がこの順番だと考えられるようになる理由の一つは「人に迷惑をかけない」ことを社会生活上のルールとする考え方が、特に日本社会では伝統的に強く意識されていることだ。自分が困窮したからといって周囲に支援をすがるのは、周囲の人達に余計な負担をかけることで、迷惑なこと。そんなことを軽々しくしてはいけないと思ってしまう。人に迷惑をかけていいはずはない。かけないで済むならその方がいいに決まっている。

 しかし、一人では生きられないはずの自分が現に生きて暮らしているのは、必ず誰かに支えられているからで、支える者にとっては、意識のあるなし、程度の大小を問わず、何らかの迷惑を被っているのだ。もちろん自分も直接・間接にあらゆる人と関わり、支える立場に立っているのだが。

 お互い様だから迷惑をかけても気にしなくていいというのではない。迷惑をかけることは心苦しいこと。だが、「迷惑をかけてごめんなさい、許してね。私が迷惑を受けたときには、私も許すから」という気持ちを互いが持ち認め合えば、自分のことで周囲に迷惑をかける思いが、支援を求めることへの高いバリアーになることは少なくなるだろう。

 そして、困難に直面した初期に適切な自助、共助、公助を組み合わせることが出来れば、困難の深刻さが大きくなる前に解決のための有効な手が打たれ、心配だった周囲への迷惑も結局は小さな範囲に収めることが出来るだろう。

 自助、共助、公助はそれぞれ必要なこと。でも、それは決して支援の順番を示したものではなく、支援の分類に過ぎない。順々にではなく、同時にやって来て、分担しながら困難解決への役割を果すものだと思う。

(カナダ友好協会代表)

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