2026年05月02日(土)

コラム・エッセイ

安全と安心

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 いつかはこうなると思っていた。政府が決定した、福島原発汚染水の海洋放出。十分に薄めてから放出するのだから、水道水を流すようなものだ、何の問題もないと言うのだが、果してそうか。10年前の原発事故の後、発生し続ける、行き所のない放射性汚染水を貯蔵し続けた結果が、敷地内を埋め尽くすタンク群となった。

 溜まる一方、出所なしのゴミ屋敷と何ら変わらない状況だから、いずれ何とかしなければならなくなるのは明らかだったのだが、10年放置して、行き着いたところが海洋放出。なぜそうなったのかというと、それが最善の方法だからではなく、外に方法がないからということだ。

 放射能は残っているが安全基準以下に薄めるから大丈夫、他の国でも同じ事をやっていると言うのだが、ちょっと待てと言いたくなる。それで多くの人の納得が得られると思っているのだろうか。世界中の原発でも放射能汚染排水を同様に海洋放出していることも問題だとは思うが、今回の決定と同列ではない。排出される放射能量はどの位なのか、どのように放出すれば安全と言えるのか。いつまでかかるのか。その間、誰がどのようにして安全管理するのか。なにも知らされないままに、決まったことだからと始められては、はい、了解とはならない。

 聞けばこの汚染水の放出は数十年はかかるという。その間の無事故をどのように保証するのか。放出のための作業や管理をどこがするのか。原発事故を起こしたあの会社なのだろうか。危ない、危ない。彼等には前歴があるのだ。絶対に漏れなどないと言い張っていた、汚染水タンクからの漏洩がバレ、言い逃れが出来なくなってからしぶしぶ認めた。

 同じ会社の別の原発では、安全対策の不備を放置していたことが暴露された。こんなところが絶対の安全を必要とする作業をミスなくやれるだろうか。万が一ミスがあっても徹底的に隠すに違いない。そんなことを思ってしまう。そして、安全のための監視を、都合の悪いことは隠蔽する、文書を改ざんしてでもなかったことにするという行政官僚組織が担うのであれば、危険の思いは更に募って、到底納得できるものではない。

 問題の本質は、安全(もちろん一番大事だが)を主張する人達に、この人達に任せれば安心という信頼がおけるのかということで、そのための必要十分な説得をし、納得を得てから決定すべき事だと思う。薄めて流すから安全という言い分が、放出先は東京湾となっても受け入れられるとはとても思えない。

(カナダ友好協会代表)

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