2026年05月02日(土)

コラム・エッセイ

排出ゼロ?

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 福島原発からの汚染廃水の海洋排出が関心を集め、安全基準以下に薄めるから大丈夫だ、いや、まかりならん太平洋は日本の下水道ではないという国際論争も起こる中で、実は世界中の原発でも日常的に同様の汚染冷却水が海洋排出されていることが明らかとなった。

 放射性廃棄物の処理技術、安全対策の無いままに発電の直接コストが安いからと飛びつき依存してきた結果の重大さを世界中が突きつけられている。生活には廃棄物が伴う。人間の活動範囲が広がり処理廃棄物の量が自然の浄化能力を超えると大きな社会問題となる。日本では高度経済成長期から各地で様々な排煙・排水による公害問題が頻発し多くの犠牲者を生んだ。

 これらの問題の多くは今ではかなり終息してきた。汚染物排出への監視が強まり、排出を抑制し処理する技術が向上したからだ。人間の活動がある限り、廃棄物問題が途絶えることはないが、お金をかければ改善されるものであるならば、まだ救いはある。

 しかし廃棄物の処理が出来ないことなら、そのこと自体を止めなければ問題は解決できない。原発はその例だ。では今世界中で注目されている地球温暖化問題はどうだろう。温暖化には二酸化炭素排出量の増大が大きく関わっていると言われ、排出量削減が社会的・政治的課題となっている。

 そして、この対策として、ガソリン自動車から電気自動車への転換、ガソリンから水素への燃料転換、火力発電から自然エネルギー発電への転換が世界を挙げて進められている。

 しかしこれで問題解決となるのだろうか。確かに電気自動車は二酸化炭素を発生しないし、水素は燃やしても水になるだけだ。太陽光発電でも二酸化炭素は発生しない。でもそれは「うちでは家事もゴミ捨ても全てお手伝いさんがやってくれている。私はゴミは一切出していないよ」と言っているようなものだ。

 電気も水素もひとりでに湧いてはこない。発電や水素製造にはそのためのエネルギーが必要だ。そこで発生する二酸化炭素の量を含めなければガソリンとの正当な比較にはならないのは自明のことで、この答のない中で、電気自動車、水素燃料への転換を進めるのは、所詮関係企業や政治家達の利益追求のための口実でしかない。

 必要なエネルギーを今降り注いでいる太陽エネルギーの範囲で賄えない限り、化石燃料で補う以外に方法はなく、その結果二酸化炭素の排出はなくならないことをはっきりと知り、エネルギー消費の形を変化させるばかりでなく消費量を削減する生活を目指さなければ二酸化炭素排出ゼロなど絵に描いた餅でしかなく、敢えてそれを唱えるのはどこかに誤魔化しがあるということに気付くべきだと思う。

(カナダ友好協会代表)

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