2026年05月02日(土)

コラム・エッセイ

英会話、そんなに大切?

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 受験のためのID(識別番号)登録期限の当日突如、発表された大学入試への英語民間試験導入延期。かねてから様々に問題点を指摘され、受験生や高校教育現場に不安を感じさせていながら、計画通り実施と、聞く耳持たなかった文科省が突然の実施断念を大臣に発表させた。聞いた誰もが、その前に大臣の口から飛び出した「身の丈に合わせて頑張れ」との、庶民感覚を逆なでする発言への反発を恐れて、とりあえず実施延期でかわそうとしたのだと思ったことだろう。

 大臣自身は「私の発言が延期の理由ではない」と、延期判断はあくまで制度の問題点を配慮した結果だと強弁するが、そんな言い訳を誰も信じない。失言だけが理由ではないとしても、野球にたとえて言えば、1点入れられたら負けの9回裏満塁で迎えた打者にカウントスリーボールツーストライクからボール球を投げて押し出し、さよならゲームとなったようなもので、様々に問題を指摘され危ぶまれていた新制度にとどめを刺すものになったことは間違いない。

 ところで多くの受験生や教育現場を巻き込んで無理押しのように進められてきた入試改革だが、何のそして誰のためのものなのだろう。今の世界、1国だけでは存在できない。グローバル化だ、世界語は英語だ、日本人は英語が苦手だ、しゃべれない。それでは世界から取り残される、大変だ、しゃべれるようにしなければと、入試への会話力テストの導入、小学校から英語教育開始、英会話力検定テストの隆盛と、国を挙げての英語教育熱。

 確かに外国語特に世界共通語化している英語に通ずることは、商売上だけでなく相互理解を深めるためにも必要かつ有意義なことなのだが、日本人にとって英語よりも大切なものは日本語のはずだ。

 自分の考えを表現し、筋道を立てて人に説明し説得できる日本語の能力を備えていない者が、外国語である英語で同じことを出来るはずがない。英語教育改革を進めることは必要ではあるが、それ以上に日本語での思考・表現能力の向上に改革的な熱意で取り組むことをしなければ、英語の歌は唄えるが、日本語で詩や文章も作れない人間を大量生産してしまうことになるだろう。

 日本人が英会話が不得手なのは教育制度のせいばかりではない。英会話など出来なくても生活に支障がない社会に住んでいるからだ。英会話力が本当に必要なら学校で教わらなくても身につくことは、多くの外国出身力士が証明してくれている。全く事前研修なしでも1年経たぬ間に日本人以上に流ちょうに日本語が話せている。日本人だって同じこと。英会話力の低さを嘆く前に、日本語力の低下を問題にすべきだろう。

(カナダ友好協会代表)

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