コラム・エッセイ
感謝、感謝。
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子先ずは物語の前座の一席。
何度目かの緊急事態宣言が解除となり、久々に県境を越えての勤務を終えたつれ合い殿、パソコンや書類を収めたリュックザックを背に電車に乗り、我が家へと帰路についた。久々の遠出に疲労を覚えたのか、車窓の景色を追っている内にいつしかまどろんでいたらしい。駅名を告げるアナウンスに目を覚まし、慌てて降車し改札を通ってバスを待つ間に、なぜか軽い背中に気がついた。
リュックがない!座席にリュックを置いたまま慌てて降りてきたのだ。もう視界から姿を消した列車をうつろに追いながら遺失物センターに電話をかけ、無事発見に胸をなで下ろし、終着駅で愛しのリュックに再会し、一件落着となった。
実は電車でのリュックの置き忘れはこれで二度目。話を聞いた娘からは呆れ声で「もう若くないんだから、忘れることを意識して注意しないと。二度あることは三度あるからね。」「わかった、わかった。」さて、これからが今回の本番。
そんなやり取りがあって1週間も経たない先月末のこと。今年度自治会の役員となり、会計係を拝命している我がつれ合い、お役目に従って必要な会費の支払いのため、近くの郵便局へと足を運んだ。
払い出し票に印鑑を押し、通帳を添えてお金を受け取り、さあ、これで今日のお役目は終わったと、肩から提げたバッグに通帳を収め郵便局をあとにした。ここまではよかった。
少し遠出をしようとバス停の時刻表に目を遣り、バッグのポケットからスマホを取りだして時刻を確かめた。バスの到着にはかなりの待ち時間があるのでその前に買い物をしようと歩き始め、ふと気になってバッグを探ると、無い。通帳が無い。底までかき回し、何度も何度も探したが、無い。
記憶をたどるうちに、さては先ほどの郵便局に忘れたかと大急ぎでとって返し、窓口に駆けつけ尋ねたが、忘れ物は無いという。居合わせた局員さん達総出で探して下さったが見当たらず、あきらめてとぼとぼと帰宅した。
一歩一歩の経路に沿って行動の記憶をたどっていると、しばらくして鳴った着信音。通帳が別の郵便局に届けられたという知らせに飛び上がって駆けつけ、無事無傷の通帳に再会した。
バス停の付近におちていたのを名も告げないでどなたかが届けて下さったそうだ。ことのてん末の報告を受け、三度目はリュックではなかったけれど、まさに二度あることは三度あるを地で行った話に、無事戻った安堵よりも唯々呆れかえったことだった。
それにしても親切に届けて下さったお方。お名前も分からず、直接お礼のしようもありませんが、本当に有り難うございました。この紙面を借りて篤く御礼申し上げます。
(カナダ友好協会代表)
