2026年05月02日(土)

コラム・エッセイ

秋の感傷

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 電車の中で前の席に座る人が一人残らずスマホを手に一心に画面に見入る姿に驚いたのはそんなに昔のことではない気がする。

 今ではそれが当たり前で、たまに本を読んでいる人がいると違和感を覚えるほどに、スマホは生活の一部、いや身体の一部になっているように思える。

 少し前までは我が家で学ぶ生徒達が教科書を開くよりも先にスマホをセットするのをたしなめていたが、気がつけば自分も手空きの時はいつの間にかスマホを手に、ライン着信を待っている。

 ほとんどが家族間や仲間同士のやり取りで、開けば一安心で終わるものが多いのだが、先日、久しぶりに目にする名の着信があった。

 この春看護学校に入学したAさん。幼い娘さんを育てながら一念発起して看護師を目指し、懸命の受験勉強を経た彼女の入学を、励ましながら見届けた後は互いに連絡することもなく日を重ねていた。

 半年ぶりの着信に、何だろうと思うのももどかしく開いて見ると、2枚の写真とメール文。最初の写真は看護服にナースキャップを着けた本人の姿。それに続いてその日学校で行われた戴帽式の様子を知らせるメール文があり、入学半年を経て無事戴帽式を迎えた感慨が綴られていた。

 以前は戴帽式は卒業を間近に控えた時期に行われていたように記憶しているのだが、今ではどこも入学半年後に行われているようだ。写真を見てうれしかったのは、ナースキャップを着けた晴れ姿は勿論だが、その明るい笑顔だった。

 若い身で、自分には計り知れないほどの苦労を体験し、笑顔を見ることも少なかった彼女の、こんなにも自然で明るい笑顔の姿を見て、様々な思いを超えて今日を迎えたAさんの喜びが直接伝わり、本当にうれしかった。

 2枚目の写真はお誕生祝いのケーキを前に笑顔一杯の娘さんの姿。もう自転車にも乗れるようになりましたという添え書きがあり、学業と育児と、1つだけでも大変な事業の両立を担う苦労の重さが、成長の証のこの笑顔で軽くなっているのだろうと感じられた。

 思いもよらぬコロナウィルス禍に社会環境が激変するのに合わせたように自分の人生行路激変の道を選んだAさん。数年後の卒業のその後にどのような道が拓けているか、それは彼女が愛娘と共に目指したものを充たせるものかどうか知るよしもないが、思いもよらぬ人生の激変に立ち向かい笑顔の戴帽式を迎えた彼女は、自分の道を力強く歩んでゆくことだろう。

 この先二人がどんな笑顔を見せてくれるか、それは楽しみなことだが、そのうち幾つを自分の目で見ることが出来るのか、それを思うと少し寂しい思いになるのは感傷の秋の気配のいたずらだろうか。

(カナダ友好協会代表)

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