2026年05月02日(土)

コラム・エッセイ

信頼の継続

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 「トンネルを抜けると,そこは雪国だった。」と始まる川端康成の名作「雪国」風に言えば、「連休を抜けると、そこは令和だった」と書き出されるのだろう。

 何の違和感もなく、平穏のうちに進んだ、平成から令和への時の流れ。昭和から平成への改元時には、恐らくその前の2度の改元時にも、先帝崩御を受けてのことだから、重苦しい黒の雰囲気に国中が包まれ、過剰自粛ムードでの出発だったが、この度は違う。何もかもが時間をかけて準備され、逝く人を悼みつつでなく、退く人を労いながら引き継ぐのだから、明るく、穏やかに、祝いの気持ち一色でその日を迎えられた。

 平成がどんな時代であったのか、思いは人さまざまで、同じ言葉で表現することは難しいだろう。バブル崩壊に見舞われ、経済活動停滞の中で国力低下と自信喪失、雇用不安に政治不信の拡大、それに自然災害多発に原発事故と、若者の将来の夢を育むにはほど遠い社会環境ばかりが記憶に残っていて、「戦争のない平和な時代」も、日本が主導した戦争はなかったが、戦争や紛争は世界中にむしろ拡大していて、それぞれに日本は無関係ではいられなかったのだから、平成が「戦争のない平和な時代」だったという思いにはなりきれない。

 しかし、一つだけ確かに感じることは、天皇(現上皇)の人柄に対する信頼がこの時代を通じて揺るがなかったことだ。天皇制の是非について述べる見識はまだ持ち合わせていないが、即位に際して「皆さんと共に日本国憲法を守り、これに従って責務を果たす」と述べられ、日本国統合の象徴としての天皇はいかにあるべきかを全身全霊で表そうとしていたことが、その言葉・行動に平成の30年を通じて一点の矛盾もなく貫かれていたことに、そのお人柄への深い信頼を覚える。生まれて間もなく戦争で父を奪われ、天皇制については複雑な思いのあるつれ合いも、全く同じ思いのようだ。

 これと対照的に、真の意図を言葉でごまかし、事実を正反対に言いくるめ責任を逃れようと厚顔無恥の言動を繰り返し、忘却のときを過ごせば何事もなかったように愚行を繰り返す権力者達の現状を見るにつけ、信頼関係を得ることとその維持の大変さと、信頼という言葉の重さをつくづくと感じる。

 新しく令和の時代の幕開けに、新上皇の意志を継続して象徴天皇の道を進まれると宣言された新天皇。その道はこれまでにも増して険しいものであるかもしれないが、是非そのお気持ちの変わることなく、国民との信頼関係を一層深めて、健康にお過ごしいただきたいと願う。

(カナダ友好協会代表)

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