コラム・エッセイ
神話崩壊
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子「ちょっと、これ見てみろ」つれ合いが手渡す携帯電話の画面を、何ごとかとのぞき込んだ。それはつれ合いの友人からのメールだった。その日のT新聞朝刊に厚労省の驚きの発表が掲載されていたというのだ。
いわく「世の中に悪玉コレステロールなどはなく、また食物のコレステロールがそのまま摂取されはしない」、さらに「LDL(低比重リポタンパク=いわゆる悪玉コレステロール)や中性脂肪を下げても病気の予防や治療の役には立たない」どころか「両者の数値の高い方が長生きするし、高脂血症のほうが脳卒中のリスクが低い」という調査結果やデータがある、と。
何だ、これは‼と、そのメールは怒っていたが、私も同感だ。その友人は続けて「かくて小生のこれまでの血の出るような栄養管理と減量の努力は水泡に帰した。(中略)医者どもというのは、かくも無責任で無定見な輩なのか?」とつづるが、これまた同感。
実はその記事をまだ見ていないし、どのようなデータに基づいているのか、詳細を確認していないので、書き急ぎははばかられるのだが、れっきとした大新聞の記事で、厚労省発表というのだから、うそではあるまい。
これを見た我がつれ合い「わが意を得たり、だな。だいたい、世に信奉されている健康神話の類は疑わしいものが多い。BMI(肥満指数)や腹囲での肥満の区分など、数字で表していかにも科学的に思わせるが、なぜ一律に区分できるのかあやふやだし、高血圧は140mmHg以上とされていたのが135mmHg以上と変更されて、正常者が一瞬にして高血圧症者になった。その結果は医者と薬屋の大繁盛だ。
さらに例を挙げて「コーヒーだって、昔は飲みすぎはよくない、一日に一、二杯程度にしておけと言われていたのに、最近は一日六、七杯以上飲む人の方が健康だと言い出した」「健康維持のためには毎日野菜三百五十グラム?できている人がいるのかね。そんなことしなくても世界一の長寿国になっている」「子供の育て方だってそうだ。おんぶはだめだ、抱っこがいいと言ってきたのが、おんぶの方がいいという説も出てきた。赤ちゃんのうつ伏せ寝がもてはやされていたのは、いつのことだったか」などなど尽きることがない。
この発表の影響、この後どうなるのだろう。悪玉コレステロール神話に乗った健康食品業界は冷や水を浴びせられた心境だろうし、医療業界も穏やかではあるまい。
そういえば、その都度、世間を騒然とさせたダイオキシン、環境ホルモン、それにマイナスイオン、近ごろ話題に上ることも少なくなったが、一体どこに行ったのだろう。
(カナダ友好協会代表)
