2026年05月02日(土)

コラム・エッセイ

長らえて、生きて。

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 春爛漫の季節。今年は暖かい冬のあと一斉に開いた桜が、時ならず訪れた寒気のためか散り遅れて、いつもより長く楽しめているようだ。昨年の同期会では一片の花びらも残っていなかった上野公園の桜が、今年はほぼ満開のまま見事に咲き誇っていたと、つれ合いの土産話が始まった。

 毎年この季節に東京で開かれる同期会に、一度も欠かさず参加している。話を聞くと、参加者は年々増えていて、今年は三十数名の参加だったそうだ。卒業以来60年近くを経て物故者も多い中、たいしたものだと思うが、これからも減ることはないだろうとつれ合い殿は言う。「今年行けずに会えなかったら、お互い来年会える保証はない。会いたいという願望よりも、会えないかもしれないという恐怖に駆られるのだろうな。」それは何となく理解できる。

 一年ぶりの再会は、まずこの間に旅立った友人への追悼の黙祷から始まり、亡き友を偲び、ついで互いの消息を伝え合い、共に暮らした日々を懐かしむ語らいを交わす。この年代になれば話題の中心は若かりし頃の思い出と、現在の我が身の健康に関わる事々で、それも五体全く健全などということは稀なことだから、先立った友人達のことは決して自分と無縁のことではなく、明日は我が身とお互い理解した、真実味のこもった話が、そこここで続く。

 そういうと何か湿っぽい雰囲気の集まりのようだが、決してそうではなく、ただ、生きていることと、旅立つことが自分にとって同じ程度の重さになっている不安な状態を、誰もが感じていることを確認し合えることで、安心を得ることになるのだとつれ合いは解説する。

 「これが1世代違う者同士だと、一方が自分の旅立ちを語り始めると若い世代は『そんなことはありませんよ。まだまだお若く、お元気ですよ。』と言う。否定することで年寄りの不安を取り払おうとする思いやりなのだが、それ以上続ける話題ではないと思うから、話はそれで終わる。」「しかし、2世代違うと様子は異なってくる。先日生徒達に同じ話をしたら、『その時には、この間先生にもらった熊のぬいぐるみをお棺に入れてあげる』『私はお花にしようかな』と楽しそうに話が続く。2世代下では生きていること以外の実感がないから、不安の共有も思いやりもないのだ。」「でも、そんな関係の話し相手があることが一番いい。その話に入っていくことで、一方的に自分が若くなれるから。」確かに。老人施設は幼稚園と併設すべきだという意見は共感できる。若い世代との交流の機会を絶やさないことが高齢化社会を支える大きな力になることだろう。

(カナダ友好協会代表)

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