2026年05月02日(土)

コラム・エッセイ

行動ときっかけ

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 第104回夏の甲子園。陸路で初めて優勝旗が白河の関を越えたと、優勝した仙台育英高校への賞賛が盛り上がった。山口県では下馬評の低い中で強豪校を次々破る予想外の健闘で決勝戦まで勝ち進み、惜しくも敗れたが準優勝を果たし故郷に凱旋した下関国際高校をたたえる声が圧倒的だったと思う。

 近年次第に実力を高め、甲子園出場も果たすようになっていた同校がついに決勝まで駒を進めたその健闘に、選手達の厳しい練習に耐えて頂点を目指した努力への賞賛を重ねて、大きな拍手と声援がおくられた。この度の快挙では、選手達の活躍を支えたこれまでの苦労や努力にまつわる逸話だけでなく、野球部低迷期から野球愛に燃えた教育者として部員達に目標達成の夢を与えながら、献身的に指導を続けてきた坂原監督の活動経歴が注目されていた。

 伝えられるところでは、同監督は大学在学中たまたま隣の高校の野球部の低調な活動の様子を見たことがきっかけで意を決し、校長に志願の手紙を出し、監督として指導に当たり、多くの苦難を生徒達と共に克服して今日に至ったのだという。

 準優勝という栄冠はこの監督の存在抜きにはあり得なかっただろう。坂原監督の誕生は、校長に志願の手紙を出すという行動によって実現されたもので、その行動は、たまたま隣の大学から同校のグランドを見たことがきっかけとなった。

 隣からグランドを見たというきっかけが、手紙を出すという行動につながり、それが野球部指導者としての坂原監督の行動となり、その行動が、見るも哀れな状態だった同校野球部を、遂には甲子園大会準優勝という状態に変化させた。

 ある状態から別の状態への変化には、その変化を起こさせる行動が必ず伴う。行動がなければ変化は起こらないのだ。そして、行動を起こすのは、大抵ふとしたきっかけなのだ。同じことを、若者支援の活動の中でつくづく感じることが多い。

 長年ひきこもり状態を続けていて、今では大学に通いながら活発に社会活動に携わっている青年も語る「状況を変えるには行動が必要だが、行動を起こすきっかけがタイミングよくあることが必要だと思う」このきっかけがあれば必ずこの行動が起こるというものではない。

 二つを結ぶタイミングが重要なのだ。状態の変化につながる行動は様々、きっかけも様々。ひきこもりという状態を変化させる行動を促すよりも、行動につながるきっかけをタイミングよく提供することが、私たちの活動の役目なのかもしれない。

 甲子園大会準優勝の話を聞きながら、何でもないように見える「きっかけ」の効果を改めて思ったことだった。

(カナダ友好協会代表)

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