コラム・エッセイ
助けを求めて
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子910ヘクトパスカル。気象庁の職員でさえ「こんな数字、聞いたことない」と言い「だからどんな風が吹くのかどんな被害になるのか、想像出来ない」というほどの超弩級の台風14号。
自転車みの速度でもったいぶって進んでくるから、まだ晴れ間が続く頃から対策を考えることができた。非常電源の蓄電器を用意し、洗濯物干しは畳んで倒しておき、バスタブには水を張って、飲料水のペットボトルを揃え乾電池にLEDライトを確認し、吹き飛ばされそうなものはしまい込んでと、身の回りの対策は一通りとったところで、はたと困ったのが、山口の自宅のこと。
普段の見守りは親友のKさんがしてくれているので安心なのだが、体力が十分ではないKさんに台風対策まで頼むわけにはいかない。Kさんから「裏の木の枝がお隣にかぶさっているから、今のうちに枝を落としておいた方がよさそう」と連絡が入り、はたと困った。
大病後、自宅を離れて療養中のわが連れ合いは帰れないし、私も娘も動けずで、迫ってくる台風の予想進路を追いながら、どうしたものかと思案していたが、意を決した我が連れ合い、スマホを手にメールを送り始めた。
この春の発病時に危急を救ってくれた生徒Hさんに、命の次にはこちらも助けておくれ、しかも台風が来る前にと、かなり無理な頼みだったが、「いいよ。」と快諾。台風通過の前日には弟さんと一緒に、Kさんが用意してくれた高枝はさみを操って、伸びきった木の枝を切り落とし、終わった様子を写真に撮って送ってくれた。
そのあとではたと気づいたのが、無防備で風を受けるガラス戸のこと。風で何か飛んできたらひとたまりもないし、そのあとどんなことになるか、想像するのも怖くなる。
もうこれしかないと、活動仲間のSさんに窮状を伝えるとすぐに駆けつけ、ガラス戸のシャッターを下ろし、家中の雨戸を閉め、心配なくなった様子を写真で知らせてくれた。
そして台風一過、周囲を埋め尽くした落ち葉を、近所のMさんがきれいに掃除して、ゴミ出しして下さった。雨戸もシャッターもSさんが元に戻してくれた。
皆さん、本当にありがとう。お礼の言葉でしか報いることはできないが、自分たちではどうしようもなかった状態を、善意に満ちた無償のボランティアで助けてもらった。
困ったときには助けを求めれば救いの手が差し伸べられることを実感させてくれた台風14号。次には自分たちが、助けを求める声に応えて、自分のできることを尽くせるようにと心に念じている。
悩みを抱えて相談もできずにいる若者達、まず助けを求めて相談しよう。きっと手を差し伸べ、一緒に考えてくれる人がいるから。
(カナダ友好協会代表)
